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コピーライターの技を、日々のビジネスに活かす。「1行の力」について。その4

16.09.16
ビジネス【マーケティング】
広告のキャッチフレーズというものは、What to sayとHow to sayからできている、とよく言います。

What to sayとは「何を言うべきか」=「メッセージの内容」です。例えば、レストランのキャッチフレーズであれば、メッセージの内容は、「味がいい」「素材が特別だ」「料理人の腕がすごい」「安くてお得だ」「ボリュームなら自信がある」「お店の雰囲気がいい」「来ているお客さんがお洒落だ」などと、さまざまな角度から考えることができます。

そのお店がどこで勝負すれば他のお店との競争に勝って、お客さんが増えそうなのかを吟味して、このWhat to sayを決めていきます。
How to sayの方は「いかに言うべきか」=「言い方/メッセージの伝え方」になります。

例えば上の例でWhat to sayを「料理人の腕がすごい」に決めた場合でも、「あの○○で修行を積んだ男のおもてなし」「コンテスト金賞受賞板前の店」「天才と呼ばれるシェフの店」「この道20年の味」など、いま思いつくままに挙げただけでも、いろいろと考えられます。

このHow to sayでの工夫について、いくつか例を見ていきましょう。

例えば、「他社製品とは違う本格的なお茶です」というWhat to sayがあるときに、How to sayで工夫して『急須で入れたような旨み』というキャッチフレーズができ上がります。

「味はイマイチだけど、身体にいいことが実感できる飲み物です」は、『あー、まずい、もう一杯』。「オレンジの味に極力近づけたジュースです」は、『オレンジより、オレンジ味』というように、言い方を工夫するわけです。

「この商品は、買ったほとんどの人の役に立っています」は、『この商品を買った91.3%の人が、役に立つと言っています』とします。

このように具体的な数字を入れ込むことは、コピーライティングの基礎的な技の一つです。

「フランスで大人気の飲み物ですが、意外と日本人の口にも合います」は、『ムッシュは、ツライよ』に。「お仕事、ご苦労様です。ちょっとした休憩に、このコーヒーを!」は、『世界は、誰かの仕事でできている』に変身します。

「本気でやせたい人は、ぜひお申込みを!」も、『本気でやせたい人以外、申し込まないでください』という風に、一工夫が施されています。

元首相の小泉純一郎さんは、このコピーライティング的なセンスが素晴らしい人でした。

「自民党を解党するくらいの覚悟で臨みます」ということを、『自民党をぶっ壊す』という見事なHow to sayでメッセージにして、当時の選挙に大勝したのは、今も記憶に残っています。

「コピーライターの技」は、What to sayとHow to sayの両方で発揮されるものです。

What to sayの方は広告主(メーカーやレストランオーナーなど)でも決めることができるものです。一方、How to sayでは、より一層コピーライターらしい技が際立ちます。

このHow to sayの部分に、ご自身でトライしてみるのも面白いのではないでしょうか。

さて、次回からは、広告業界やマーケティング業界が長年磨いてきた「発想法」について、解説していきたいと思います。 次回は『ビジネスは“アイディア勝負”。広告界が育ててきた「発想法」に学ぼう。その1』です。


佐藤達郎の今すぐ使える!マーケティング手法 


●プロフィール●
佐藤達郎 さとうたつろう
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。


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