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患者さんの病識・病覚が正しいかどうかが予後に大きな影響

16.06.02
業種別【医業】
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先生方は、患者さんの予想外の病識・病覚に驚かされたご経験はありませんか? 

内科診療所を開業して3年になるA先生は、2年前から糖尿病でお薬を出している60代女性のBさんから、「先生、私、糖尿病なんでしょうか?」と、改めて尋ねられたことがあるそうです。 

「告知していないはずはないけれど」と驚きつつ、電子カルテを確認し、「2年前に血液検査のデータで診断し、糖尿病だとお話しして、薬の処方を開始していますよ。覚えていませんか?」と話したところ、Bさんは「糖尿病だったなんて…」と深刻な表情でした。
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A先生は、「正しい病識・病覚を持って服用や生活習慣に気をつけてもらうことが重要と考え、1年に1回程度、病名を確認するようになりましたが、病名を改めて聞いて、意外な表情になる患者さんは少なくありません。何回も何回も同じ話をする必要があります」と話されていました。 

A先生には、正しい病識・病覚の重要性を痛感した経験がありました。 

40代男性のCさんは高血圧で、A先生が勤務していた病院に通院していました。祖父母共に脳卒中で亡くなっているCさんは、高血圧に対する問題意識が高く、降圧剤もきちんと服用し、家庭用血圧計で自己管理をする習慣もありました。しかし、脳梗塞を発症し、救急搬送されました。 

後でわかったことですが、Cさんは高血圧に対しては一生懸命でしたが、30代に発症した糖尿病と脂質異常症を放置していたそうです。 

「糖尿病と脂質異常症は別の病院にかかっていると聞いていましたが、実際は未治療でした。高血圧も糖尿病も脂質異常症も脳卒中との関連性が高いですが、Cさんの病識・病覚には偏りがあったのです。脳卒中にはなりたくない、という気持ちが強い患者さんでしたが、糖尿病と脂質異常症に対する間違った病識・病覚に気づきませんでした」と、A先生。 

TV、新聞、雑誌、インターネットなど、健康や病気に関する情報は巷にあふれているものの、患者さんがどのような病識・病覚を持っているのか、もっと患者さんと話をしてみないとわからないと実感したそうです。 

患者さんの病気に対する考え方や価値観が、病気との付き合い方や予後にも影響するのだと納得させられたA先生でした。


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[プロフィール] 
藤原恵子(ふじわら・けいこ) 
医療系出版社の編集記者を経て独立。フリーの医療ライターとして、病院経営、開業ノウハウ、医療マーケティング、医療ボランティア、医療職のキャリアアップや結婚事情などをテーマに医療関連雑誌で取材・執筆活動を行う。書籍では、病院ランキングや医療マンガの取材協力、看護・介護関連書籍では『イラストでわかる高齢者のからだと病気』(中央法規出版)の企画・編集に携わる。趣味は人の話を聞くこと、古文書解読。 
 


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