今年も取材に行って来ました。“カンヌライオンズ2015”ご報告。その5
5回にわたってご報告して来たカンヌライオンズ2015。最終回は、カンヌライオンズのもう一つの特徴でもある多数のセミナーから、クライント(広告主)が登壇したものをピックアップしてご紹介します。広告は、どんなに素晴らしい案が提案されたとしても、広告主がOKしなければ世に出ないので、広告主の考えは非常に重要なのです。
今年特に興味深かったのは、経済誌「エコノミスト誌」が主催し、毎朝10時30分~11時30分に開催されたCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)のパネルディスカッション。CMOと言えば、広告主のマーケティングの責任者で、だいたいは取締役クラスです。
毎朝3人の有名グローバル・ブランド(ユニリーバ、P&G、マクドナルド、ハイネケンなど)のCMOあるいは相当する役職の人が招かれ、クリエイティビティと広告コミュニケーションについて語り合いました。CMOたちの発言のいくつかをご紹介しましょう。
「素晴らしい広告を作るのは、クライアントの役目であり使命。そのためには、クライアントが中心にいて、リーダーシップを発揮すること。そのやり方は、ベストな才能を集め、ベストな提案をしてもらい、そしてYESと言うことだ」
「知ってること、やったことのあることを、やるな。知らないこと、やったことのないことを、試せ」
「変化は人を不安にさせる。それは人間の本性だ。しかし世界はものすごい勢いで動いている。誰もそこから逃がれることはできない」
メイン会場で行われたセミナーでも、ユニリーバ、ハイネケン、ジョニーウォーカー、ハーシーズなどのCMOクラスが登壇し、熱いスピーチを繰り広げました。
総じて言えるのは、カンヌでは、偉い人ほど「変化を認め、受け入れ、積極的に活用しよう」と発言する、ということ。Embrace (抱きしめる、積極的に受け入れる)という言い方で、「エンブレイス・ザ・チェンジ」と言った発言を繰り返していました。
それに対して、日本企業の広告主は、偉い人ほど「変化しないモノの中にこそ本質がある」という物言いをする、という印象を僕は持っています。
カンヌでも、あるCMOは「マーケティングの本質は変わらない」と発言していましたが、同時に「世界はものすごい勢いで変化している」と、繰り返し発言していました。つまり、ここでの「本質は変わらない」というのは、アプローチの仕方や具体的な施策では多くのチャレンジをするということが前提での発言なのです。
欧米の広告主は、急速に、ものすごい勢いで変化しているようです。もちろん日本企業の広告主の方々も素晴らしく優秀で、必死に努力をされています。それはよく知っていますが、日本文化特有の伝統重視型のカルチャーの中で、少し遅れを取っているのではないか? そんな懸念を漠然と抱かせる内容ばかりでした。
こうした広告主側の急速な変化を、コトラーがマーケティングの変化について論じた「マーケティング3.0」に習って 僕は「クライアント3.0」と呼んで研究を続けています。
さて、次回からは、都道府県や市町村の広告・広報の今について、ご紹介していきます。
次回の「佐藤達郎のマーケティング論」は『いま、シティプロモーションが熱い!都道府県/市町村の広告・広報の現在。その1』をお届けします。
佐藤達郎のマーケティング論
[プロフィール]
佐藤 達郎(さとう・たつろう)
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。
[記事提供]
(運営:株式会社アックスコンサルティング)
毎朝3人の有名グローバル・ブランド(ユニリーバ、P&G、マクドナルド、ハイネケンなど)のCMOあるいは相当する役職の人が招かれ、クリエイティビティと広告コミュニケーションについて語り合いました。CMOたちの発言のいくつかをご紹介しましょう。
「素晴らしい広告を作るのは、クライアントの役目であり使命。そのためには、クライアントが中心にいて、リーダーシップを発揮すること。そのやり方は、ベストな才能を集め、ベストな提案をしてもらい、そしてYESと言うことだ」
「知ってること、やったことのあることを、やるな。知らないこと、やったことのないことを、試せ」
「変化は人を不安にさせる。それは人間の本性だ。しかし世界はものすごい勢いで動いている。誰もそこから逃がれることはできない」
メイン会場で行われたセミナーでも、ユニリーバ、ハイネケン、ジョニーウォーカー、ハーシーズなどのCMOクラスが登壇し、熱いスピーチを繰り広げました。
総じて言えるのは、カンヌでは、偉い人ほど「変化を認め、受け入れ、積極的に活用しよう」と発言する、ということ。Embrace (抱きしめる、積極的に受け入れる)という言い方で、「エンブレイス・ザ・チェンジ」と言った発言を繰り返していました。
それに対して、日本企業の広告主は、偉い人ほど「変化しないモノの中にこそ本質がある」という物言いをする、という印象を僕は持っています。
カンヌでも、あるCMOは「マーケティングの本質は変わらない」と発言していましたが、同時に「世界はものすごい勢いで変化している」と、繰り返し発言していました。つまり、ここでの「本質は変わらない」というのは、アプローチの仕方や具体的な施策では多くのチャレンジをするということが前提での発言なのです。
欧米の広告主は、急速に、ものすごい勢いで変化しているようです。もちろん日本企業の広告主の方々も素晴らしく優秀で、必死に努力をされています。それはよく知っていますが、日本文化特有の伝統重視型のカルチャーの中で、少し遅れを取っているのではないか? そんな懸念を漠然と抱かせる内容ばかりでした。
こうした広告主側の急速な変化を、コトラーがマーケティングの変化について論じた「マーケティング3.0」に習って 僕は「クライアント3.0」と呼んで研究を続けています。
さて、次回からは、都道府県や市町村の広告・広報の今について、ご紹介していきます。
次回の「佐藤達郎のマーケティング論」は『いま、シティプロモーションが熱い!都道府県/市町村の広告・広報の現在。その1』をお届けします。
佐藤達郎のマーケティング論
[プロフィール]
佐藤 達郎(さとう・たつろう)
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。
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(運営:株式会社アックスコンサルティング)