内定者が入社前研修で被災したらどうする?
当社では、来春卒社員全員に入社前研修を実施します。研修内容は、講義と実習(工場内でのアルバイト等と同様の実地業務)から成り、新卒者賃金を時間換算して支給する予定です。また、参加は学業に支障がない限り強制とします。
研修期間中に、内定者が研修施設で負傷した場合、労災保険の適用はどのように考えるのでしょうか。
研修期間中に、内定者が研修施設で負傷した場合、労災保険の適用はどのように考えるのでしょうか。
労災保険は、「労働者の業務上の事由または通勤による負傷、疾病、傷害、死亡等に対して必要な保険給付を行うもの」です。
労働者とは、労働基準法上の労働者(労働基準法9条)と同一のものを指すとされています。このことから、入社前研修等に参加する内定者について、労基法上の労働者に該当するか否かを判断し、労災保険の給付対象になるかどうか判断しなければなりません。
通常、新規学卒者は、内定から入社までの期間は比較的長くなります。そのため、入社後、業務にスムーズになじませるためにアルバイト期間を設ける例もあるかと思います。
研修中やアルバイト期間中のケガ等に関しては、当該期間中に活動していた内定者に「労働者性」があれば、労災の対象となります。研修の場合でいえば、参加が義務づけられていて、会社の業務指示に基づいて行われていたり、研修内容が会社の本来業務の遂行を含むような場合には「労働者性」があるといえます。
研修中の事故に関して、行政解釈は、次のように判断しています。
労災認定されたケースについては、以下のようなものがあります。
・個人開業医の看護婦見習(昭24・4・13基収886号)や、看護婦養成所の生徒の実習生(昭24・6・24基発648号など)は、一般の看護婦の労働と明確に区分されていることなどがない限り、原則として労災保険の適用があるとしたもの。
一方で、労災認定がされなかったケースとしては、以下のようなものがあります。
・商船大学および商船学校などの学生が工場等で実習を行う場合、労災保険の適用はないとされたもの(昭57・2・19基発121号)。
なお、当該事案は、実習の実施に当たって
(1)大学から委託先である事業所に対し、所定の教育実習委託費が支払われていること
(2)大学の工場実習規程等に基づいて行われていたこと
(3)現場実習は、通常、一般労働者と明確に区分された場所で行われていること、また生産ラインの中で行われる場合であっても、軽度の補助的作業に従事する程度にとどまっていること
(4)実習手当の額は、一般労働者の賃金と比べて著しく低いことから、一般に実費補助的ないし恩恵的な給付であること
などを、総合的に勘案したものです。
つまり、入社研修前に労災保険の適用を認めるには、実際に一般の労働者と同様に直接生産活動に携わる必要等が示されています。
事故への過失が認められた場合、企業へ損害賠償を求めてくることも考えられます。万が一の場合に備えて、事業場内での安全管理には、十分な配慮が必要でしょう。
現場で気になる労働法Q&A
【記事提供元】
安全スタッフ2015年11月15日号
労働者とは、労働基準法上の労働者(労働基準法9条)と同一のものを指すとされています。このことから、入社前研修等に参加する内定者について、労基法上の労働者に該当するか否かを判断し、労災保険の給付対象になるかどうか判断しなければなりません。
通常、新規学卒者は、内定から入社までの期間は比較的長くなります。そのため、入社後、業務にスムーズになじませるためにアルバイト期間を設ける例もあるかと思います。
研修中やアルバイト期間中のケガ等に関しては、当該期間中に活動していた内定者に「労働者性」があれば、労災の対象となります。研修の場合でいえば、参加が義務づけられていて、会社の業務指示に基づいて行われていたり、研修内容が会社の本来業務の遂行を含むような場合には「労働者性」があるといえます。
研修中の事故に関して、行政解釈は、次のように判断しています。
労災認定されたケースについては、以下のようなものがあります。
・個人開業医の看護婦見習(昭24・4・13基収886号)や、看護婦養成所の生徒の実習生(昭24・6・24基発648号など)は、一般の看護婦の労働と明確に区分されていることなどがない限り、原則として労災保険の適用があるとしたもの。
一方で、労災認定がされなかったケースとしては、以下のようなものがあります。
・商船大学および商船学校などの学生が工場等で実習を行う場合、労災保険の適用はないとされたもの(昭57・2・19基発121号)。
なお、当該事案は、実習の実施に当たって
(1)大学から委託先である事業所に対し、所定の教育実習委託費が支払われていること
(2)大学の工場実習規程等に基づいて行われていたこと
(3)現場実習は、通常、一般労働者と明確に区分された場所で行われていること、また生産ラインの中で行われる場合であっても、軽度の補助的作業に従事する程度にとどまっていること
(4)実習手当の額は、一般労働者の賃金と比べて著しく低いことから、一般に実費補助的ないし恩恵的な給付であること
などを、総合的に勘案したものです。
つまり、入社研修前に労災保険の適用を認めるには、実際に一般の労働者と同様に直接生産活動に携わる必要等が示されています。
事故への過失が認められた場合、企業へ損害賠償を求めてくることも考えられます。万が一の場合に備えて、事業場内での安全管理には、十分な配慮が必要でしょう。
現場で気になる労働法Q&A
【記事提供元】
安全スタッフ2015年11月15日号