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今年も取材に行って来ました。“カンヌライオンズ2015”ご報告。その4

15.11.27
ビジネス【マーケティング】
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ここ数回にわたって、カンヌライオンズ2015のご報告をしています。今までは「新しい傾向」に焦点を当ててきましたが、今回は、「新しくなくてもイイものはイイよね」という事例をご紹介したいと思います。それは、手法的には新しくなくても、感動や笑いを起こさせてくれる広告たちです。
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一つ目の事例は、ジョン・ルイスというイギリスのデパートのテレビCMです。このジョン・ルイスは、毎年クリスマス・シーズンに心温まるテレビCMを放映することで有名なのですが、今回もそんな表現を見せてくれました。 

そのテレビCMは、6歳くらいの小さな男の子と、その子が大好きなペットのペンギンの物語です。男の子はそのペンギンが大好きで、散歩に連れて行ったり、サッカーの試合に同行させたり、おやつを親に内緒で分け与えたり、一緒に眠ったりしています。 

ところが、そのペンギン君に異変が起こります。どうも、カップルが気になって仕方がないようなのです。テレビドラマのキスシーンに見入り、街でもカップルに目が釘づけになります。最初はいぶかっていた男の子も、やがて「このペンギン君は相手(ガールフレンド)が欲しいんだ」と理解するに至ります。 

ペンギン君のことが大好きな男の子は、なんとか彼の望みをかなえようと、クリスマスに「(ペンギンの)ガールフレンド」をプレゼントすることにします。その日、家にやって来た女の子ペンギン。ペンギン君は大喜びで彼女に駆け寄ります。男の子も満足気に2匹のペンギンに近寄ると、なんと! 実はペットのペンギンはヌイグルミだったのです。男の子は、2体のペンギン・ヌイグルミを、いとおしそうに手にしています。 

そうです。ペットのペンギン君は元々ヌイグルミだったのです。ただ、男の子にとっては、まるで本物のペンギンのように大切な存在だった、というお話です。かなりグッと来るストーリーで、本当によく出来たテレビCMになっています。 

もう一つは、「オールド・スパイス」という若い男の子用のボディスプレーのテレビCM。こちらは年頃の男の子が、女の子とのデートに出かけるときに、この商品を身体に付けていくものです。 

このオールド・スパイスの前作「マムズ・ソング(母の歌)」は、昨年のカンヌライオンズで金賞を受賞しています。お母さんたちが、自分の可愛い息子が「男」になっていくのを歌でひたすら嘆きまくる、笑えるテレビCMです。 

「ダッド・ソング(父の歌)」と名付けられた今年の金賞受賞作は、昨年の続編。今度は父親たちも登場します。相変わらず息子が「男」になることを嘆き続ける母親たちに対して、父親たちは「彼はもう少年じゃない、男だ」とか「彼を自由に、女の子の元に行かせてやれ」などと、母親たちに対抗する形で歌い続けます。「どこの国の親たちも同じなんだなぁ」と共感しながらも、大笑いできる面白いテレビCMに仕上がっています。 

さて、次回もう一度だけ、“カンヌライオンズ2015”をご紹介していきたいと思います。 

次回の「佐藤達郎のマーケティング論」は『今年も取材に行って来ました。“カンヌライオンズ2015”ご報告。その5』をお届けします。 


佐藤達郎のマーケティング論 


[プロフィール] 
佐藤 達郎(さとう・たつろう) 
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。 

[記事提供] 

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