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今年も取材に行って来ました。“カンヌライオンズ2015”ご報告。その2

15.10.02
ビジネス【マーケティング】
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前回から、毎年6月末に行われる広告/マーケティング界の一大イベント、カンヌライオンズ2015のご報告をしています。 

今回は、もう一つ目立った流れとして、「行動で示して拡散」という方法論をご紹介しましょう。私はこのやり方を「Doing & Spread」と呼んでいます。

別の言い方をすれば、「Telling から Doing ヘ」。従来の広告が、美しい映像や面白いストーリーで、言いたいことを「伝えよう、伝えよう(Telling)」としていたのに対し、まず何かをヤル(Doing)ことから始めて、それを拡散することを考える、というものです。
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代表的な事例として、アルゼンチンでサムスンが行った「SAFETY TRUCK」があります。 

アルゼンチンではおよそ1時間に1人が、交通事故で亡くなっています。そのうちの多くが、無理な追い越しが原因だそうです。片道1車線だらけの国なのに、多くの人が無理をしても追い越したがる。そこでサムスンが行ったのは「SAFETY TRUCK」を作ることでした。 

それは、トラックの後方部分全体をディスプレイとし、サムスンの持つ映像技術を駆使して、トラックの前方の様子を映像化。トラックの後ろについた車が前方の様子を把握できるようにし、安全に追い越しができるようにした、というものです。 

何台のSAFETY TRUCKが用意されたかは明言されていませんが、事例ビデオを見る限り6台のようです。これをもって「賞狙いだけの施策」という人もいますが、そんなことはありません。たとえ6台であっても、SAFETY TRUCKが活躍する様子を動画に仕立てて拡散を図れば、広告コミュニケーションとしての役割は十分に期待できるからです。チタニウム・ライオンを始め、ゴールドだけでも、サイバー部門、アウトドア部門、プロモ&アクティベーション部門で受賞しました。 

もうひとつの代表例は、VOLVOがイギリスで行った「LIFE PAINT」で、デザイン部門とプロモ&アクティベーション部門でグランプリを受賞しました。VOLVOは、2020年までにVOLVO車がかかわる死亡事故や重大事故の数を劇的に減らすことを目的に掲げていて、そのために行った施策です。

イギリスでは自転車通勤者が多く、事故に遭う人も毎年1万9000人を超えています。そこでVOLVOは、LIFE PAINTという特殊なスプレーを開発。そのスプレーを衣服に吹きかけると、「肉眼では普通に見えるのに、クルマのライトで照らした時だけ光って見える」というもので、これによって事故を減らそうと試みました。2000缶を無償で配布し、その後ネットで販売も行い、1週間で2万缶が買われることになったのです。 

この事例では、「われわれは自動車事故数削減に努力します!」などと声高に叫びませんでした。自転車事故の悲惨さを描いて注意を呼びかけることもしませんでした。やったのはLIFE PAINTの開発・配布・販売です。つまり「行動で示した」のです。そして、その内容を動画にまとめ、さらなる拡散を図ったわけです。 

次回の「佐藤達郎のマーケティング論」は『今年も取材に行って来ました。“カンヌライオンズ2015”ご報告。その3』をお届けします。 


佐藤達郎のマーケティング論 


[プロフィール] 
佐藤 達郎(さとう・たつろう) 
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。 

[記事提供] 

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