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「移行医療」でクリニックの特色を打ち出そう

15.06.07
業種別【医業】
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4月に開催された「日本医学会総会2015関西」。主要テーマとして掲げられた「20の柱」の20番目に挙げられていたのが「移行医療」です。

「移行医療」とは、小児期発症疾患を抱えたまま成人になる患者の、小児期から成人期への引き継ぎの時期における医療のこと。1990年代後半から提唱された「成育医療」の概念の延長上にあり、これまでの主な担い手であった小児科医の間では「移行期(・)医療」と呼ばれています。しかし、医学会総会では「transitional medicine=移行医療」と題しています。
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なぜ「期」が抜けたのでしょうか。筆者はそこに、あえて小児から成人への過渡期といった「期」を定めず、患者の生涯にわたって病態が変化しても、切れ目なく適切な治療を行い、生涯にわたって診る医療体制を確立しよう、というメッセージを感じました。

具体的な疾患として、今回の医学会総会では、てんかんや自閉症スペクトラム障害などの発達障害、小児がん、先天性心疾患、川崎病、筋ジストロフィーなどが取り上げられていました。小児がんはいまや7割は完治しますが、後遺症による晩期障害が長期にわたって続きます。筋ジスも現在の治療により、寿命は30歳代半ばまで延伸しており、「移行医療」へのニーズは医学の進歩とともにあると言えます。

この他にも、出生前診断によって診断される疾患やさまざまな遺伝性疾患など、乳幼児期の診断についても、いつ発症するかわからず、長期的なフォローを必要とする疾患もすべて対象になるでしょう。おそらく、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(Hereditary Breast and/or Ovarian Cancer Syndrome;HBOC)など、現在のところまだ乳幼児のうちに診断するシステムが整っていない疾患も含まれると思います。

さて、今後のクリニックが差別化、特色を打ち出す方策のひとつとして、「移行医療」に取り組むのも一案ではないかと思います。あらゆる移行医療に手を広げるのは無理があると思いますが、どこかひとつ専門性を持ち、週に1回、たとえば「発達障害外来」を開くという形もあると思います。人生のステージを超えて患者さんと伴走するクリニック──「移行医療」のコンセプトに、そんなクリニックの姿を思い浮かべました。


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[プロフィール]
中保 裕子(なかほ・ゆうこ)
医療ライターとして全国のがん医療、地域医療の現場を中心に医療者、患者、家族へのインタビューを行うほか、新聞広告等での疾患啓発広告制作、製薬企業等のマーケティング調査の実績も多い。有限会社ウエル・ビー 代表取締役。 
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