企業間で行われる社員の『レンタル移籍』とは?
社員が別企業で働く方法として、従来は『出向』が一般的でしたが、ここ数年、『レンタル移籍』が注目されてきました。
レンタル移籍は雇用調整やキャリア形成などの目的で行われる出向と、どのように違うのでしょうか。
レンタル移籍の概要や出向との違い、企業にとってのメリットなどについて紹介します。
レンタル移籍は雇用調整やキャリア形成などの目的で行われる出向と、どのように違うのでしょうか。
レンタル移籍の概要や出向との違い、企業にとってのメリットなどについて紹介します。
ビジネスでも浸透しつつあるレンタル移籍
レンタル移籍とはサッカーなどのプロスポーツクラブで、現在のクラブに所属したまま期限を決めて別のクラブに移籍することです。
従来、スポーツ業界で実施されてきたこのレンタル移籍が、現在、ビジネスにも広がりつつあります。
ビジネスで行われているレンタル移籍は、従業員に一定期間別の企業で働く機会を提供し、さまざまな学びを得て帰ってきてもらうものです。
レンタル移籍のほかに、『企業間留学』と呼称されることもあります。
レンタル移籍を行うにあたっては、企業間で『研修契約』を結び、研修制度の一環として実施されるのが一般的です。
研修の一環との位置づけのため、レンタル移籍する従業員の給与・社会保障などは送り出す側の企業が支払います。
また、企業間で『業務設計書』『プロジェクト設計書』といった契約書を交わし、レンタル移籍する社員の業務内容や基本の勤務日程など、移籍にあたって必要な取り決めを行います。
そのため、移籍する社員に対する指揮命令権は送り出し側である在籍企業に存在します。
レンタル移籍と似ているのが出向です。
出向には籍を出向先企業に移す転籍出向と、出向元企業に籍を残したまま出向する在籍出向があります。
転籍出向は出向元企業との雇用関係は完全に解消され、退職扱いになります。
人員削減といった雇用調整を目的に実施されることが多い出向です。
これに対して在籍出向は出向元企業との雇用関係を維持したまま、出向先企業とも雇用契約を結びます。
そのため、給与の支払いはどちらが払うという決まりはなく、送り出し側と受け入れ側、双方の企業で話し合い決定するのが一般的です。
業務の指揮命令権も両企業にあり、どのように業務を進めるかは企業間で取り決めることになります。
在籍出向はこのような性質から、出向元企業では経験できない業務経験を社員に積ませるといった人材育成・キャリア形成を目的とするケース、業績の悪化した子会社に親会社から立て直しのための人材を出向させるといった経営戦略上の目的があるケース、合併などの際の人材交流を目的とするケースなどがあります。
レンタル移籍のさまざまなメリット
レンタル移籍は、人材育成・キャリア形成を目的に行われていた在籍出向をより積極的に展開するものです。
現在、大手企業からベンチャー企業へレンタル移籍をするケースが多く、そのマッチングサービスを行う事業会社も登場しています。
このように大企業とベンチャー企業間で行われるレンタル移籍は、双方の企業にとってメリットがあります。
まず、送り出す企業にとってのメリットは以下のようなものです。
・人材育成・キャリア形成につながる
・従業員の視野が広がる
・自社を客観的に見ることができる
大企業からベンチャー企業にレンタル移籍する社員は、次世代経営層候補、幹部候補であることが一般的です。
大企業では経験できない『修羅場』をベンチャー企業で経験することで、ビジネスパーソンとしての成長が期待されているようです。
また、異なった環境に身を置くことで、自社や自身についての視野を広げることも可能です。
前述の通り従来、在籍出向という形でこのようなキャリア形成が行われてきましたが、在籍出向以上の効果をレンタル移籍によって得られる(と期待されている)ため、レンタル移籍が支持されているといえます。
一方、受け入れ先企業におけるメリットは、次のようになります。
・優秀な人材が確保できる
・他企業の手法を取り込み、事業強化ができる
・自社の魅力を感じることができる
レンタル移籍の対象となる社員は、送り出す企業にとって、より成長してほしいと期待をかけられている優秀な人材です。
そのため、移籍する社員は受け入れ先企業においても即戦力としての活躍が期待できます。
また、大企業で長年洗練されてきた業務の進め方や手法をレンタル移籍してきた社員から得られる、人員不足を補うことができる、大企業とのつながりを持てる、事業強化につながるなどといった点もメリットです。
送り出す企業と受け入れる企業の双方にメリットのあるレンタル移籍ですが、まったく問題がないわけではありません。
レンタル移籍をした従業員が新しい環境に刺激を受け、ほかの場所で自分の力を試したいと、転職意向を強めてしまう可能性もあります。
そのため、移籍する従業員が自社に対するエンゲージメントを低下させないよう、こまめにコミュニケーションをとり、フォローやケアを欠かさないことが大切です。
またレンタル移籍終了後に、他の企業で得た知見やスキルを活かす体制を、多方面から検討して整えておくことも重要です。
業務内容や役職などについて、新たに得た力を最大限発揮できる魅力的な状況を提示することは、力をつけた従業に「元の企業に戻ってまた働きたい」と思ってもらい、エンゲージメントを高めることにもつながるでしょう。
いくつかの注意点はあるものの、レンタル移籍は次世代経営層・幹部社員育成においても強みのある手法です。
人材戦略にレンタル移籍を取り入れることで、中核人材を計画的に育成できる可能性があります。
レンタル移籍支援サービスを活用するなど、人材育成の新たな手法の一つとして導入を検討してはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2023年5月現在の法令・情報等に基づいています。
レンタル移籍とはサッカーなどのプロスポーツクラブで、現在のクラブに所属したまま期限を決めて別のクラブに移籍することです。
従来、スポーツ業界で実施されてきたこのレンタル移籍が、現在、ビジネスにも広がりつつあります。
ビジネスで行われているレンタル移籍は、従業員に一定期間別の企業で働く機会を提供し、さまざまな学びを得て帰ってきてもらうものです。
レンタル移籍のほかに、『企業間留学』と呼称されることもあります。
レンタル移籍を行うにあたっては、企業間で『研修契約』を結び、研修制度の一環として実施されるのが一般的です。
研修の一環との位置づけのため、レンタル移籍する従業員の給与・社会保障などは送り出す側の企業が支払います。
また、企業間で『業務設計書』『プロジェクト設計書』といった契約書を交わし、レンタル移籍する社員の業務内容や基本の勤務日程など、移籍にあたって必要な取り決めを行います。
そのため、移籍する社員に対する指揮命令権は送り出し側である在籍企業に存在します。
レンタル移籍と似ているのが出向です。
出向には籍を出向先企業に移す転籍出向と、出向元企業に籍を残したまま出向する在籍出向があります。
転籍出向は出向元企業との雇用関係は完全に解消され、退職扱いになります。
人員削減といった雇用調整を目的に実施されることが多い出向です。
これに対して在籍出向は出向元企業との雇用関係を維持したまま、出向先企業とも雇用契約を結びます。
そのため、給与の支払いはどちらが払うという決まりはなく、送り出し側と受け入れ側、双方の企業で話し合い決定するのが一般的です。
業務の指揮命令権も両企業にあり、どのように業務を進めるかは企業間で取り決めることになります。
在籍出向はこのような性質から、出向元企業では経験できない業務経験を社員に積ませるといった人材育成・キャリア形成を目的とするケース、業績の悪化した子会社に親会社から立て直しのための人材を出向させるといった経営戦略上の目的があるケース、合併などの際の人材交流を目的とするケースなどがあります。
レンタル移籍のさまざまなメリット
レンタル移籍は、人材育成・キャリア形成を目的に行われていた在籍出向をより積極的に展開するものです。
現在、大手企業からベンチャー企業へレンタル移籍をするケースが多く、そのマッチングサービスを行う事業会社も登場しています。
このように大企業とベンチャー企業間で行われるレンタル移籍は、双方の企業にとってメリットがあります。
まず、送り出す企業にとってのメリットは以下のようなものです。
・人材育成・キャリア形成につながる
・従業員の視野が広がる
・自社を客観的に見ることができる
大企業からベンチャー企業にレンタル移籍する社員は、次世代経営層候補、幹部候補であることが一般的です。
大企業では経験できない『修羅場』をベンチャー企業で経験することで、ビジネスパーソンとしての成長が期待されているようです。
また、異なった環境に身を置くことで、自社や自身についての視野を広げることも可能です。
前述の通り従来、在籍出向という形でこのようなキャリア形成が行われてきましたが、在籍出向以上の効果をレンタル移籍によって得られる(と期待されている)ため、レンタル移籍が支持されているといえます。
一方、受け入れ先企業におけるメリットは、次のようになります。
・優秀な人材が確保できる
・他企業の手法を取り込み、事業強化ができる
・自社の魅力を感じることができる
レンタル移籍の対象となる社員は、送り出す企業にとって、より成長してほしいと期待をかけられている優秀な人材です。
そのため、移籍する社員は受け入れ先企業においても即戦力としての活躍が期待できます。
また、大企業で長年洗練されてきた業務の進め方や手法をレンタル移籍してきた社員から得られる、人員不足を補うことができる、大企業とのつながりを持てる、事業強化につながるなどといった点もメリットです。
送り出す企業と受け入れる企業の双方にメリットのあるレンタル移籍ですが、まったく問題がないわけではありません。
レンタル移籍をした従業員が新しい環境に刺激を受け、ほかの場所で自分の力を試したいと、転職意向を強めてしまう可能性もあります。
そのため、移籍する従業員が自社に対するエンゲージメントを低下させないよう、こまめにコミュニケーションをとり、フォローやケアを欠かさないことが大切です。
またレンタル移籍終了後に、他の企業で得た知見やスキルを活かす体制を、多方面から検討して整えておくことも重要です。
業務内容や役職などについて、新たに得た力を最大限発揮できる魅力的な状況を提示することは、力をつけた従業に「元の企業に戻ってまた働きたい」と思ってもらい、エンゲージメントを高めることにもつながるでしょう。
いくつかの注意点はあるものの、レンタル移籍は次世代経営層・幹部社員育成においても強みのある手法です。
人材戦略にレンタル移籍を取り入れることで、中核人材を計画的に育成できる可能性があります。
レンタル移籍支援サービスを活用するなど、人材育成の新たな手法の一つとして導入を検討してはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2023年5月現在の法令・情報等に基づいています。