歯科矯正などのモニター募集を行う際の注意点とは?
歯科矯正のモニター募集とは、クリニック側の提示した条件を満たす患者に、モニター価格で施術を提供する制度のことです。
通常は、アンケートの回答や口コミの投稿、症例写真の利用などが条件になります。
患者は高価な歯科矯正を割引価格で受けられ、クリニックは集患を図ることができるというメリットがあります。
しかし、近年はこれらのモニター募集を発端としたトラブルも起きています。
クリニックが歯科矯正のモニターを募集するメリットとリスクを紹介します。
通常は、アンケートの回答や口コミの投稿、症例写真の利用などが条件になります。
患者は高価な歯科矯正を割引価格で受けられ、クリニックは集患を図ることができるというメリットがあります。
しかし、近年はこれらのモニター募集を発端としたトラブルも起きています。
クリニックが歯科矯正のモニターを募集するメリットとリスクを紹介します。
モニター募集の患者とクリニックのメリット
歯科矯正や審美歯科治療のモニター募集は、現在、さまざまなクリニックで行われており、モニターに採用されれば割引価格でこれらの施術が受けられるとあって、多くの患者が応募します。
歯科矯正には、ワイヤー矯正や裏側矯正、マウスピース矯正などがあり、どの施術も割引率は10~50%ほどですが、クリニックのなかにはモニターに対し、無料で施術を行うところもあるようです。
患者は施術を安価で受けられるほかに、多くの場合は歯科医の指示通りに通院することになるため、比較的スムーズに治療を進められるというメリットがあります。
自分で予定を立てるのが苦手な人や、可能な限り短期間で通院を終えたい人などは、モニターに採用されることで、クリニックの立てたスケジュール通りに治療を完了させることができるでしょう。
一方、クリニックにとってもさまざまなメリットがあります。
一つは、症例写真をクリニックの成果として利用できることです。
患者の治療前後や治療過程の口腔内の写真撮影をモニター募集の条件にしておけば、これらの写真をクリニックのホームページやパンフレットで症例として紹介することができます。
また、学会や学術誌で資料として発表することも可能です。
クリニックによっては治療過程の動画撮影や簡単なインタビューを行うケースもあり、クリニックのYouTubeチャンネルで訴求に使用するほか、スタッフの研修や患者の説明などにも使われています。
症例写真を使用する場合は、プライバシー保護の観点からも患者の顔や氏名は出さずに、どうしても出す必要があれば、許諾を取りましょう。
また、モニターの患者にアンケートや口コミの投稿を依頼できるのもメリットです。
患者の生の声を拾えるアンケートは、接遇やサービスの改善にもつながるほか、モニター募集時の条件で掲載する旨を提示している場合は、ホームページやパンフレットなどで使用することもできます。
口コミサイトやSNS、自院のホームページなどへのレビュー投稿は、クリニックのPRにもなり、集患効果が期待できるでしょう。
これらの投稿で気をつけたいのは、クリニックが評価を故意に誘導しないことです。
評価の誘導は捏造にもなり、クリニックの信用を失墜させる行為でもあります。
モニター患者自身の体験談や感想といったレビューとしての投稿を依頼するのであれば、内容は患者自身に任せることが大切です。
モニター制度を巡って起きたトラブル
これまで述べたように、歯科矯正のモニター制度はクリニックにも患者にもメリットがあります。
しかし、条件や状況によってはトラブルにも発展しかねないということに注意が必要です。
2022年3月、ある医療法人において、歯科矯正のモニター制度を巡るトラブルが表面化しました。
この医療法人では、マウスピースを使用した歯科矯正のモニターを募集し、宣伝に協力した患者に治療費を返金することで、実質0円で歯科矯正が行えると謳っていました。
しかし、患者に返金するための資金繰りがうまくいかず、モニターの患者への返金が止まり、トラブルに発展します。
患者のなかには治療を受けたことで噛み合わせが悪くなったなど、健康被害を訴える人や、治療費のローンを組むために申告内容の偽装を指示された人もいたそうです。
被害者は1,500人以上、被害総額は20億円超になるといわれており、2023年1月には、患者約150人が医療法人の幹部や医師らに対し、約2億円の損害賠償を求める集団訴訟を起こしました。
また、詐欺や特定商取引法違反の疑いもあるとして、刑事訴訟も視野に入れ、実態の解明が進められています。
この事例では、健康被害が出ていることからも、モニターに対して適切な施術や説明がなされていなかった可能性があります。
特にマウスピース矯正には術後に咬み合わせが悪くなる、顎に痛みが出るなどといったリスクもあるので、クリニックはしっかりと説明責任を果たさなければなりません。
通常の患者と同じように、メリットとリスクを説明したうえで、適切な施術を行う必要があります。
また、モニター募集を行う前に、さまざまなシチュエーションを想定した規約を作成しておくことも重要です。
万が一に備え、途中で治療を中断せざるをえないケースも想定し、規約を作成しておきましょう。
モニターに採用した患者にはこれらの規約や治療中断の条件などを細かく説明し、同意を得たうえで承諾書に記入してもらうなど、二重三重の確認を行うことが大切です。
※本記事の記載内容は、2023年5月現在の法令・情報等に基づいています。
歯科矯正や審美歯科治療のモニター募集は、現在、さまざまなクリニックで行われており、モニターに採用されれば割引価格でこれらの施術が受けられるとあって、多くの患者が応募します。
歯科矯正には、ワイヤー矯正や裏側矯正、マウスピース矯正などがあり、どの施術も割引率は10~50%ほどですが、クリニックのなかにはモニターに対し、無料で施術を行うところもあるようです。
患者は施術を安価で受けられるほかに、多くの場合は歯科医の指示通りに通院することになるため、比較的スムーズに治療を進められるというメリットがあります。
自分で予定を立てるのが苦手な人や、可能な限り短期間で通院を終えたい人などは、モニターに採用されることで、クリニックの立てたスケジュール通りに治療を完了させることができるでしょう。
一方、クリニックにとってもさまざまなメリットがあります。
一つは、症例写真をクリニックの成果として利用できることです。
患者の治療前後や治療過程の口腔内の写真撮影をモニター募集の条件にしておけば、これらの写真をクリニックのホームページやパンフレットで症例として紹介することができます。
また、学会や学術誌で資料として発表することも可能です。
クリニックによっては治療過程の動画撮影や簡単なインタビューを行うケースもあり、クリニックのYouTubeチャンネルで訴求に使用するほか、スタッフの研修や患者の説明などにも使われています。
症例写真を使用する場合は、プライバシー保護の観点からも患者の顔や氏名は出さずに、どうしても出す必要があれば、許諾を取りましょう。
また、モニターの患者にアンケートや口コミの投稿を依頼できるのもメリットです。
患者の生の声を拾えるアンケートは、接遇やサービスの改善にもつながるほか、モニター募集時の条件で掲載する旨を提示している場合は、ホームページやパンフレットなどで使用することもできます。
口コミサイトやSNS、自院のホームページなどへのレビュー投稿は、クリニックのPRにもなり、集患効果が期待できるでしょう。
これらの投稿で気をつけたいのは、クリニックが評価を故意に誘導しないことです。
評価の誘導は捏造にもなり、クリニックの信用を失墜させる行為でもあります。
モニター患者自身の体験談や感想といったレビューとしての投稿を依頼するのであれば、内容は患者自身に任せることが大切です。
モニター制度を巡って起きたトラブル
これまで述べたように、歯科矯正のモニター制度はクリニックにも患者にもメリットがあります。
しかし、条件や状況によってはトラブルにも発展しかねないということに注意が必要です。
2022年3月、ある医療法人において、歯科矯正のモニター制度を巡るトラブルが表面化しました。
この医療法人では、マウスピースを使用した歯科矯正のモニターを募集し、宣伝に協力した患者に治療費を返金することで、実質0円で歯科矯正が行えると謳っていました。
しかし、患者に返金するための資金繰りがうまくいかず、モニターの患者への返金が止まり、トラブルに発展します。
患者のなかには治療を受けたことで噛み合わせが悪くなったなど、健康被害を訴える人や、治療費のローンを組むために申告内容の偽装を指示された人もいたそうです。
被害者は1,500人以上、被害総額は20億円超になるといわれており、2023年1月には、患者約150人が医療法人の幹部や医師らに対し、約2億円の損害賠償を求める集団訴訟を起こしました。
また、詐欺や特定商取引法違反の疑いもあるとして、刑事訴訟も視野に入れ、実態の解明が進められています。
この事例では、健康被害が出ていることからも、モニターに対して適切な施術や説明がなされていなかった可能性があります。
特にマウスピース矯正には術後に咬み合わせが悪くなる、顎に痛みが出るなどといったリスクもあるので、クリニックはしっかりと説明責任を果たさなければなりません。
通常の患者と同じように、メリットとリスクを説明したうえで、適切な施術を行う必要があります。
また、モニター募集を行う前に、さまざまなシチュエーションを想定した規約を作成しておくことも重要です。
万が一に備え、途中で治療を中断せざるをえないケースも想定し、規約を作成しておきましょう。
モニターに採用した患者にはこれらの規約や治療中断の条件などを細かく説明し、同意を得たうえで承諾書に記入してもらうなど、二重三重の確認を行うことが大切です。
※本記事の記載内容は、2023年5月現在の法令・情報等に基づいています。