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一人親方が法人化する際に押さえておきたいポイントとは

23.01.31
業種別【建設業】
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労働者を雇用せずに、自分一人もしくは家族で事業を営む『一人親方』。
会社に縛られず、自由な働き方ができますが、事業の拡大や増益などを見据えて、法人化を検討している人も多いのではないでしょうか。
建設業における会社の設立、いわゆる『法人成り』は、一般的な個人事業主の法人化に共通する部分と、異なる部分があります。
今回は、『一人親方』が法人化する際のメリットとデメリット、法人化の注意点などを紹介します。
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『一人親方』の法人化のメリットとは

総務省による『労働力調査』では、2017年の建設業就業者の総数は約498万人でした。
このうち、自営業主の総数は79万人、『一人親方』を含む雇無業主は約59万人となっています。
雇無業主の数は、従業員を雇用している雇有業主や、建設会社に勤務する雇用者と比べても、ゆるやかな上昇傾向にあり、今後もその傾向は続いていくと考えられています。

一人親方は、自身の裁量で仕事を進められ、交渉によっては高い単価で仕事を請け負えるなどのメリットがあります。
一方で、あくまで個人事業主なので、大手企業と取り引きがしづらいといったデメリットもあります。

建設業においては、大手企業が一人親方と直接的に取り引きすることは少なく、ほとんどの場合、間に大手から仕事を請け負った中堅の建設会社が入ることになります。

現在の仕事量や受注内容のまま個人事業主として事業を継続していくのなら、現状維持でも問題ありませんが、将来的に事業規模を拡大したいのであれば、法人化によるメリットを享受できる可能性があります。

『一人親方』の法人化とは、個人事業主として仕事をしていた人が会社を設立し、これまでの仕事を法人として引き継ぐことを意味します。
一般企業の従業員などが、独立をきっかけに新しい会社を設立する『新規開業』とは区別されます。

法人化を行うメリットの一つは、社会的な信用が高くなることです。
規模の大小はあっても、立場上は大企業と同じ法人です。
これまで個人事業主だったために取り引きできなかった企業と取り引きできる可能性があります。

また、社会的な信用が高くなり、銀行などの金融機関から融資を受けやすくなるので、これまで以上に、資金調達がしやすくなる可能性があります。


建設業ならではの法人化する際の注意点

『一人親方』からの法人化は、さまざまな税制面の優遇措置が受けられるというメリットもあります。
法人化することで、自身の給与は法人から支払われることになるため、これを経費として所得から差し引くことができます
これを『給与所得控除』といいます。
そのほかにも、経費の幅が増えたり、欠損金の繰越ができるなどの優遇措置があります。

一方デメリットとしては、法人税の納付が発生する、社会保険料の負担が高額になる、経理事務が煩雑になるなどがあげられます。
ただ、社会保険料については、健康保険と同時に厚生年金への加入が義務となるため負担額は増えますが、将来的な年金の受給額が増えることにつながるという側面もあります。

注意したいのは、労災保険です。
これは一般の法人化とは少し事情が異なります。

『一人親方』という呼称は、建設業のほか、林業や漁業従事者、個人タクシー運転手などに限られ、一般的な個人事業主とは区別されます。
これらの一人親方は、業務の実情や災害の発生状況などを鑑みて、労災保険への『特別加入制度』が設けられているため、法人化しなくても労災保険が適用されます。
また、法人化しても、自分一人や家族が従業員として事業を行っている場合は、継続して特別加入制度を利用することができます。
一人でも労働者を雇用すると、特別加入者としての要件を満たさなくなり、中小事業主の特別加入制度を利用して労災保険に入り直さなければなりません。

さらに、建設業の『一人親方』が法人化する際には、個人事業主のときに取得した建設業許可を法人として承継する手続きが必要になります。
以前は、継承できず新規に取得し直す必要がありましたが、2020年の建設業法改正により、許可を法人に引き継げるようになりました。
これによって空白期間を生じさせることなく、許可の必要な仕事を請け負うことができます。
ただし、承継の認可申請は、役員や、専任技術者の常勤など、いくつかの要件があるので、確認しておきましょう。

法人化はメリットだけではなく、会社設立のための費用や時間がかかったり、事務負担が増加したりといったデメリットもあります。
本当に法人化する必要があるのか、よく考えたうえで判断しましょう。


※本記事の記載内容は、2023年2月現在の法令・情報等に基づいています。