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SNSでの誹謗中傷対策を強化! 改正プロバイダ責任制限法

22.05.10
ビジネス【法律豆知識】
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SNS等の普及により、個人がインターネット上で誹謗中傷を受けることも多くなりました。
そのような事態に遭遇してしまった時に関係する法律が、『特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律』(通称『プロバイダ責任制限法』)です。
このプロバイダ責任制限法が改正され、もうすぐ施行される運びとなりました。
今回は、より円滑に被害者を救済できるように見直された、改正プロバイダ責任制限法について説明します。
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新たな裁判手続の創設

プロバイダ責任制限法は、2001年に施行された比較的新しい法律です。
しかし、ネット社会である現代では、SNSなどを介した誹謗中傷による被害者は、後を絶ちません。
そこでプロバイダ責任制限法は、SNSで誹謗中傷した人物を速やかに特定できるよう改正され、2022年10月頃までに施行されることになりました。
改正の主なポイントは、以下の2つです。

●新たな裁判手続の創設
●開示請求を行うことができる範囲の見直し

それぞれ、順に見ていきましょう。
これまで、SNSでの誹謗中傷等による被害者が発信者を特定しようとすると、

(1)SNS事業者等への開示請求(仮処分申立て)をして、発信者の権利侵害投稿の際のIPアドレスとタイムスタンプを取得
(2)これを基に通信事業者等への開示請求(訴訟提起及び消去禁止の仮処分申立て)をして、発信者の氏名および住所を取得する

という2段階の訴訟手続が一般的に必要とされてきました。
そして、被害者が、加害者に損害賠償請求するためには、

(3)これにより取得した氏名および住所を利用して損害賠償請求訴訟を提起する

という決まりに基づき、特定した後の損害賠償請求などの裁判手続も含めると、3回もの裁判手続を行う必要がありました。

そこで今回の改正では、これまでのような手続きの煩雑さを防ぎ、より円滑に被害者を救うことを目的に、上記(1)(2)を1つの手続で行うことを可能とする『新たな裁判手続き』(非訟手続)が創設されました。

新たな裁判の具体的な手続きは、次のようになります。
まず、SNS事業者等に対する開示命令の申立てにより、手続が開始されます。
SNS事業者等において通信事業者等の名称と住所が判明する場合には、提供命令により当該名称と住所が被害者に提供されます。

これを基に被害者が同じ裁判所に対して、通信事業者等に対する開示命令を申し立てると、SNS事業者等から通信事業者等に対して、IPアドレス等、通信事業者等が発信者を特定するための発信者情報が提供されます。

そして、発信者情報開示請求の要件を満たすと裁判所が判断した場合には、SNS事業者等が保有するIPアドレスや、通信事業者等が保有する発信者の氏名・住所等が被害者に開示されることになります。
また、手続中に発信者の特定ができなくなることを防止するため、裁判所は消去禁止命令を出すことができ、各事業者において迅速なログの保全がなされることになります。

つまり、改正された法律では、被害者からの申立てをもとに裁判所が投稿者の情報を開示するかどうかを判断し、SNS事業者や通信事業者に命令を出せるようになったのです。
これまで発信者情報の開示を求める被害者にとって大きな負担となっていた時間とコストが、かなり軽減されることになります。


開示請求を行うことができる範囲の見直し

次に、もう一つの改正ポイントである、開示請求を行うことができる範囲の見直しです。

SNSサービスのなかには、Twitterのように、投稿時にIPアドレスやタイムスタンプのログを記録・保有せずに、ログイン時の情報しか保有しないというログイン型のサービスがあります。
しかし、投稿時ではなくログイン時の情報が “発信者情報”に該当するのか否かは法律上明確となっておらず、裁判の結果も別れていました。

そこで、今回の改正では、発信者の特定に必要となる場合には、ログイン時の情報の開示が可能となるよう開示請求を行うことができるようになりました
開示請求範囲を拡大したことにより、ログイン時のIPアドレスなどから、ログインのための通信経路を辿って発信者を特定できる可能性が高くなります。

上記のほかに、開示請求を行った事業者が発信者に対して行う意見照会において、発信者が開示に応じない場合には、『その理由』も併せて照会することとするなど、全体的に迅速な被害回復を実現するために必要な改正が行われました。

もっとも、これらの改正に伴う総務省令はまだ公表されておらず、実際の運用がどのようになるのかは現段階では不透明な部分も多いといえます。
とはいえ、公布の日から1年6カ月を越えない範囲内という施行日までの期限も着々と経過しています。

改正されたプロバイダ責任制限法が具体的にいつどのような形で施行され、どのように運用されていくのか、注視していきたいものです。


※本記事の記載内容は、2022年5月現在の法令・情報等に基づいています。