法改正されても油断は禁物! 悪質な販売預託商法
「健康器具などのオーナーになれば、高い配当金が得られる」などとうたい、消費者からお金を集める、いわゆる『販売預託商法(オーナー商法)』の被害者が後を絶ちません。
2021年、特定商品等の預託等取引契約に関する法律、いわゆる『預託法』の改正により、原則禁止となったものの、現在でも違法な営業を続けている業者が存在しているようです。
販売預託商法による詐欺は、そのほかの詐欺的な商法と比べても、被害の規模が大きく、被害を受けないためには、消費者が警戒心を持つことがとても大切です。
今回は、販売預託商法の仕組みと、改正内容について説明します。
2021年、特定商品等の預託等取引契約に関する法律、いわゆる『預託法』の改正により、原則禁止となったものの、現在でも違法な営業を続けている業者が存在しているようです。
販売預託商法による詐欺は、そのほかの詐欺的な商法と比べても、被害の規模が大きく、被害を受けないためには、消費者が警戒心を持つことがとても大切です。
今回は、販売預託商法の仕組みと、改正内容について説明します。
巧妙な手口による販売預託詐欺
今回の法改正で、原則禁止となった販売預託商法とは、売主が物品や権利を消費者に販売すると同時に、消費者からその物品等を預かって自ら運用したり、第三者(ユーザー)に貸し出すといった事業を行うなどで、配当等により消費者に利益を還元したり、契約期間の満了時に物品等を一定の価格で買い取ったりなどする取引のことをいいます。
もちろん、適切な販売預託商法が行われているのであれば、違法行為とはならないのですが、残念なことに悪質な業者は後を絶たず、この販売預託商法はいまだに消費者被害の温床となっています。
悪徳な業者の手口の典型は、たとえば、物品等を運用するふりをして実際には全く運用せず、別の消費者から得た購入代金の一部を配当金として渡し、自転車操業的に利益の還元を装います。
大幅な損失が生じていてもそれを消費者に通知しないため、被害者の数だけが増え続けるのです。
これまでにも、さまざまな詐欺被害事件が起きています。
1980年代には、わが国史上最大の詐欺事件ともいわれた『豊田商事事件』が起きました。
消費者は、豊田商事と金の地金を購入する契約を結びますが、現物は消費者に引き渡さず業者が預かって運用し、運用利益を配当すると説明されます。
しかし、実際には業者は金地金をほとんど保有しておらず、事務所に積まれていた『金の延べ棒』も実は偽物だった事実が判明しました。
この事件の被害者数は約2万9,000人、被害総額は約2,000億円にのぼるといわれています。
この詐欺事件を契機に、『特定商品等の預託等取引契約に関する法律(預託法)』が制定されました。
しかし、その後も安愚楽牧場事件、ジャパンライフ事件など歴史に残る詐欺被害事件が起きています。
法改正により、販売預託は原則禁止に
そのような事件で大型の摘発が続いたにもかかわらず、販売預託商法にかかる詐欺被害が生じていることを踏まえて、2021年6月に預託法が改正されました(1年以内に施行)。
今回の預託法の主な改正内容は、以下の通りです。
(1)販売預託の原則禁止
●販売を伴う預託等取引を原則禁止とし、罰則を規定
●原則禁止の対象となる契約を民事的に無効とする制度の創設
(2)預託法の対象範囲の拡大
●現行の預託法では対象を限定列挙→廃止。全ての物品等を対象に
(3)消費者利益の擁護増進のための規定の整備
●行政処分の強化等
今回の改正は、消費者の脆弱性につけ込む悪質商法に対する抜本的な対策強化のためのものであり、新たな日常における社会経済情勢等の変化への対応のためであり、つまりは消費者被害の防止に資するものです。
しかし、悪徳な業者はいつも法律の抜け道を探しており、そうした業者が逃げたり倒産したりした場合は、結局のところ被害者のもとに金銭が戻らないといったことが起こり得ます。
昨今では、単純な物品ではなく、“権利”や“役務”といったものも販売預託商法の取引対象とされており、詐欺の手口も益々複雑化、巧妙化しています。
高齢者人口が増え続けている今、高齢者をターゲットにした悪質な販売預託商法も増えることが予想されます。
まずは都合のいい儲け話に乗せられ、詐欺被害にあうことのないよう注意しましょう。
※本記事の記載内容は、2021年8月現在の法令・情報等に基づいています。
今回の法改正で、原則禁止となった販売預託商法とは、売主が物品や権利を消費者に販売すると同時に、消費者からその物品等を預かって自ら運用したり、第三者(ユーザー)に貸し出すといった事業を行うなどで、配当等により消費者に利益を還元したり、契約期間の満了時に物品等を一定の価格で買い取ったりなどする取引のことをいいます。
もちろん、適切な販売預託商法が行われているのであれば、違法行為とはならないのですが、残念なことに悪質な業者は後を絶たず、この販売預託商法はいまだに消費者被害の温床となっています。
悪徳な業者の手口の典型は、たとえば、物品等を運用するふりをして実際には全く運用せず、別の消費者から得た購入代金の一部を配当金として渡し、自転車操業的に利益の還元を装います。
大幅な損失が生じていてもそれを消費者に通知しないため、被害者の数だけが増え続けるのです。
これまでにも、さまざまな詐欺被害事件が起きています。
1980年代には、わが国史上最大の詐欺事件ともいわれた『豊田商事事件』が起きました。
消費者は、豊田商事と金の地金を購入する契約を結びますが、現物は消費者に引き渡さず業者が預かって運用し、運用利益を配当すると説明されます。
しかし、実際には業者は金地金をほとんど保有しておらず、事務所に積まれていた『金の延べ棒』も実は偽物だった事実が判明しました。
この事件の被害者数は約2万9,000人、被害総額は約2,000億円にのぼるといわれています。
この詐欺事件を契機に、『特定商品等の預託等取引契約に関する法律(預託法)』が制定されました。
しかし、その後も安愚楽牧場事件、ジャパンライフ事件など歴史に残る詐欺被害事件が起きています。
法改正により、販売預託は原則禁止に
そのような事件で大型の摘発が続いたにもかかわらず、販売預託商法にかかる詐欺被害が生じていることを踏まえて、2021年6月に預託法が改正されました(1年以内に施行)。
今回の預託法の主な改正内容は、以下の通りです。
(1)販売預託の原則禁止
●販売を伴う預託等取引を原則禁止とし、罰則を規定
●原則禁止の対象となる契約を民事的に無効とする制度の創設
(2)預託法の対象範囲の拡大
●現行の預託法では対象を限定列挙→廃止。全ての物品等を対象に
(3)消費者利益の擁護増進のための規定の整備
●行政処分の強化等
今回の改正は、消費者の脆弱性につけ込む悪質商法に対する抜本的な対策強化のためのものであり、新たな日常における社会経済情勢等の変化への対応のためであり、つまりは消費者被害の防止に資するものです。
しかし、悪徳な業者はいつも法律の抜け道を探しており、そうした業者が逃げたり倒産したりした場合は、結局のところ被害者のもとに金銭が戻らないといったことが起こり得ます。
昨今では、単純な物品ではなく、“権利”や“役務”といったものも販売預託商法の取引対象とされており、詐欺の手口も益々複雑化、巧妙化しています。
高齢者人口が増え続けている今、高齢者をターゲットにした悪質な販売預託商法も増えることが予想されます。
まずは都合のいい儲け話に乗せられ、詐欺被害にあうことのないよう注意しましょう。
※本記事の記載内容は、2021年8月現在の法令・情報等に基づいています。