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二世帯住宅は登記に注意? 小規模宅地等の特例が適用されないことも

21.04.06
業種別【不動産業(登記)】
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小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たした人が亡くなった人の住んでいた土地や事業地を相続すると、その土地の評価額が、最大で80%減額されるという制度です。
満額の評価額に対して相続税がかかると、生活の基盤となる今まで住んでいた家や事業を手放さねばならない人が出るため、そうした酷な状況を招かないようにと創設されました。
しかし、同じ家に住んでいても、二世帯住宅であった場合、登記のしかたによっては、小規模宅地等の特例が使えなくなることがあります。
今回は、小規模宅地等の特例と登記の注意点について解説します。
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小規模宅地等の特例とはどういう制度か

まず小規模宅地等の特例についておさらいしておきましょう。

小規模宅地等の特例は、被相続人等が相続開始の直前に自宅の敷地として使っている土地等や事業用として使っている土地等について、一定の要件を満たす場合に土地等の評価額を減額して相続税を計算する制度です。
事業用として使っている土地等については50%または80%、自宅として使っている土地等については80%が減額されます。

『小規模宅地等』という名のとおり、この特例では、限度面積が設定されており、自宅の場合は330平方メートルまでとされています。

被相続人の自宅の敷地の場合、小規模宅地等の特例が使えるのは、被相続人の配偶者、被相続人と同居していた親族や、特定の条件にある自宅を所有していない親族です。
同居していない親族も、一定条件を満たすことで制度を利用することができます。


同居親族なのに特例が使えないケースも?

小規模宅地等の特例は、相続税を減額できる大きなチャンスです。
しかし、条件が複雑なため、適用される条件かどうかを事前に確認しておく必要があります。

今回は、二世帯住宅を建てて被相続人と一緒の建物に住んでいた息子が相続人となるケースを想定してみましょう。

二世帯住宅で親子世帯が同居していた場合、その住まい方は以下の2つに分けることができます。

(1) 一軒家の1階は親世帯、2階は子ども世帯とし、家の中にある階段などを使って移動する場合(非分離型)
(2) 一軒家で1階は親世帯、2階は子ども世帯とするが、1階と2階の入口は別で、移動するときは外の階段を使う場合(分離型)

さらに建物を登記するときの方法も、以下の3つのケースに分けることができます。

(1) 建物を親子の共有にし、共有登記をする
(2) 建物を親の所有とし、登記も親名義で単独登記にする 
(3) 建物の所有権を親と子の各専有部分で分割し、それぞれが区分登記を行う 

ちなみに、(3)の区分登記について少し解説を加えましょう。
区分登記をするには、建物の各部分に構造上、利用上の独立性があることが要件とされています。
たとえば、複数の世帯が住む分譲マンションを購入するときには、自分の部屋だけを購入して登記します。
二世帯住宅の建物であってもそれと同じで、構造上、利用上独立した専有部分のある建物であれば、区分建物として、親と子それぞれで分けて区分登記することが可能なのです。

さて、このなかで、(1)の建物を親子の共有にし共有登記をする、と、(2)の建物を親の所有とし、登記も親名義で単独登記にするという2つのケースについては、相続開始時点で被相続人と親族(息子)が同居しているとみなされるため、要件を満たせば小規模宅地等の特例を使って相続税評価額を大きく下げることができます。

しかし、(3)の二世帯住宅の建物を区分登記していた場合、別々の家に住んでいたとみなされ、同居していることにはならないので、小規模宅地等の特例を使うことはできません。
このように、同じ構造の建物であっても登記方法によって、特例が使えなくなってしまうケースがあるのです。


区分登記の二世帯住宅で特例を使うには?

たとえば、1階部分と2階部分が構造上、利用上独立した建物であり、1階部分は父名義、2階部分は息子名義の区分建物として登記がされている二世帯住宅の敷地には、小規模宅地等の特例は適用できません。

もし区分登記をしてしまった二世帯住宅で、将来、親が亡くなったときに小規模宅地等の特例を使いたいと考えている場合には、どうすればよいのでしょうか。

まず方法としては、相続開始前までに区分登記を解消し、単独登記、または共有の登記に直すことで、特例の対象となることができます。

現状で区分登記になっているかどうか分からないときには、法務局で登記事項証明書を取り寄せて確認するとよいでしょう。

このほかにも、小規模宅地等の特例については、非同居であっても特例が適用される場合など、さまざまなケースがあります。

相続税額を劇的に下げることのできる制度ですが、税制改正によってたびたび適用条件が変わっていることもあり、活用を検討する際には確認が必要です。


※本記事の記載内容は、2021年4月現在の法令・情報等に基づいています。