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再確認の必要あり! ホームヘルパーの移動・待ち時間の賃金

21.04.06
業種別【介護業】
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高齢化を背景に、より一層、ホームヘルパーの存在が重要になってきています。
しかし、介護サービスの利用者の増加とは裏腹に、介護職の離職率は高いままです。
そこで厚生労働省は、ホームヘルパーの賃金水準を上げるべく、介護職の法定労働条件の再確認と、その遵守の必要性について、全国の自治体に通知しました。
今回は、ホームヘルパーの労働時間に関する問題点と、厚生労働省による通知の内容について説明します。
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地域包括ケアシステムの推進によりさらに高まる介護職の需要

総務省がまとめた『人口推計』によると、日本は2020年9月現在で65歳以上の高齢者が3,600万人を超え、高齢化率は約28%となりました。
今後も高齢者人口の増加は進み、2025年には高齢化率が30%に達すると予測されており、医療や介護リソースのひっ迫が懸念されています。

そこで厚生労働省は、そのようなひっ迫状況を緩和する対策として、重度の要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしをしてもらいながらケアを受けられるよう、地域の包括的なサービス提供や支援を仕組化した『地域包括ケアシステム』の構築を推進しています。

地域包括ケアシステムは、具体的には市町村や都道府県が、高齢者の住まい・医療・介護・予防・生活支援を包括的に提供して終生的に面倒を見られるようにする、『地域で』『包括的にケアする』体制のことです。
高齢者がこれまでにない早さで増えている今、これまでと同じように入院や施設入所をしてもらうには、医療施設や介護施設の受け入れ数が追いつかないことが予想されます。
そこで、療養の場の確保という課題の解決策として、『在宅医療・在宅介護の推進』があげられています。

そのような場合に在宅での介護を支えるのが、ホームヘルパー(訪問介護職)です。
在宅介護への取り組みが強化されることにより、ホームヘルパーの人材確保や医療・介護機関との連携はこれまで以上に求められることでしょう。

しかし、ホームヘルパーは介護職のなかでも賃金の水準が低く、また、利用者の増加による人手不足も業務の忙しさの原因となっています。
それゆえ、残念ながら離職してしまう人が多いのが現状です。
介護業界においては、離職抑制のためにも待遇の改善が重要な課題であるといえます。


ホームヘルパーの賃金が安くなる理由とは

ホームヘルパーの賃金水準が低い要因の一つに、『移動時間』の取り扱い方があります。

ホームヘルパーは、要介護者が暮らす自宅を訪問して介護サービスを提供するため、『介護事業所』『利用者宅』の相互間を移動する時間が必ず発生します。
自宅から直接、利用者宅へ訪問することもあれば、介護事業所を経由してから利用者宅へ訪問するケースや、利用者宅から次の利用者宅へ移動するケースもあります。

このようにホームヘルパーが1日に複数の家を訪問する場合は、訪問回数や訪問先への距離などに応じて移動時間も増加します。
また、利用者宅から事業所へ戻り、次の利用者宅へ訪問する約束の時間までに間があった場合は、そこで『待機時間』も発生します。
労働基準法上では、このような移動時間や待ち時間も労働時間として取り扱うことになっています。

しかし、介護現場の実態としては移動時間や待機時間を労働時間として取り扱っていない介護事業所も多数存在しているため、朝から夕方まで働いても、移動時間を除くと4~5時間分の時給しかもらえないというケースも多いのです。

そのようなホームヘルパーの現状を改善するために、厚生労働省は2021年1月に、『訪問介護労働者の移動時間等の取扱いについて(周知徹底)』として問題提起を全国の自治体へ向けて通知しました。
この通知では、移動時間と待機について、以下のように定めています。

【移動時間】
使用者が、業務に従事するために必要な移動を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当する。

【待機時間】
使用者が急な需要等に対応するため事業場等において待機を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当する。

そのほかにも、利用者からのキャンセルや時間変更などでヘルパーを休ませるケースは『ほかの利用者宅での勤務の可能性などを十分に検討し、最善の努力を尽くしたと認められない場合には、休業手当の支払いが必要になる』と指摘しています。
厚生労働省は、これらの介護事業者は遵守すべき法令を整理し、徹底するよう呼びかけています。

これからさらに高まるであろう在宅介護の需要に応えるためには、ホームヘルパーの存在は不可欠です。
ホームヘルパーの収入を確保するためにも、事業所においては、移動時間・待ち時間などを含めた労働時間に対する曖昧な取り扱いを解消することが先決といえます。

この機会に従業員への賃金形態を見直し、従業員の定着率を高めていきましょう。


※本記事の記載内容は、2021年4月現在の法令・情報等に基づいています。