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介護事業所が副業・ダブルワークを認める場合のポイントとは

21.01.05
業種別【介護業】
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『働き方改革』を推進するための施策の一つとして、国は副業・ダブルワークなどに対する柔軟な労働環境を求めています。
今後、介護事業所で働くスタッフの間でも副業・ダブルワークへの関心は高まっていくことが予想されます。
そこで今回は、スタッフが副業・ダブルワークを実際に行う場合に、介護事業所として法律上知っておかなければならないポイントを解説します。
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増加傾向にある介護業界のダブルワーク希望

『副業』と『ダブルワーク』という名称は混在して使われていることが多いようですが、その意味は少し異なります。

副業は、本業で生活の主となる収入を得ている方が、本業の空き時間などに行う仕事のことをいいます。
一方、ダブルワークは2つ以上の仕事を掛け持ちしていることをいい、どれか一つが本業というわけではなく、どちらも同じくらいの時間で、同じくらいの収入を得るような働き方のことをいいます。
2つ以上の仕事を持つ“兼業”とほぼ同義語といえるでしょう。

介護業では、これまでにも、非正規雇用の多い介護ヘルパーなどを中心に多くの方がダブルワークをしてきました。
しかし、正規職員の副業については、多くの事業所が原則として禁止しているため、少しでも多くの収入を得たいという人は、事業所に内緒で副業に従事しているという状況でした。

ところが働き方改革にまつわるさまざまな制度の導入に伴い、副業・ダブルワークの解禁が広く謳われることとなり、介護業界においても従業員の副業や兼業について柔軟な考え方を示す事業所が増えてきました。

事業所においては、副業・ダブルワークを認める働き方への変更は、法律上の取り扱い方など確認すべき事柄が増えることも考えられるため、運用する際にはいくつかの注意点があります。
ここで、従業員の副業・ダブルワークを認める際に把握しておくべき、重要なポイントを確認しましょう。


柔軟な働き方を認めるうえで大事なポイント

【ポイント1:労働基準法との調整】
労働基準法では、労働者を働かせることができる法定労働時間について1日8時間以内、1週間に40時間以内と定められており、これを超えて働かせる場合、事業所は2割5分以上の割増賃金を支払う義務が発生します。

これは、副業やダブルワークの場合でも適用されますので、本業との一日あたりの労働時間の合計が8時間を超えた場合は、後で勤務した事業所に、割増賃金の支払い義務が生じることになります。
たとえば、A社で6時間勤務後にB社で4時間働いた場合、合計10時間労働になりますので、B社で2時間分に対する2割5分の割増賃金を加算して支払わなければなりません。

【ポイント2:社会保険との調整】
社会保険(厚生年金、健康保険)の加入対象の拡大のため、現在は従業員数501人以上の事業所でも、次の条件を満たす場合は、パートやアルバイトであっても社会保険への加入義務が生じます。

●1年以上の雇用見込があること
●週の労働時間が20時間以上であること
●1カ月の給与が8万8,000円以上であること
●学生ではないこと

これにより、労働時間数によっては副業・ダブルワーク先の事業所でも社会保険の加入義務が発生し、本業と副業両方で社会保険に加入しなければならないという状況も考えられます。
事業所の規模についても、現在、加入対象となるのは従業員数が501名以上の事業所ですが、2022年10月には101名以上、2024年10月には51名以上と適用拡大が進んでいくことになっており、今後は該当する介護事業所は増加していくでしょう。

【ポイント3:年末調整】
本業が常勤で、その給料以外に副業での収入がある場合、原則は本業の事業所で年末調整を行うことになります。
労働時間の長い事業所で年末調整を行った場合でも、副業・ダブルワークでの収入が1年間で20万円を超えた場合は、自身で確定申告をする必要があります。

そのほかにも、副業・ダブルワークを認めることで疲労の蓄積や不注意等による労災の可能性も増加しますので、過重労働にならないよう適度な聞き取り調査や面談の実施が求められます。
また、同業間での副業・ダブルワークは、事業所の機密情報や個人情報が漏洩するリスクも秘めていますので、『秘密保持契約書』や『就業規則』などで明確な取り決めを行うことも重要です。

今後は、労働力人口の減少により、事業所スタッフの副業・ダブルワークを認めることや副業として働く人を採用する機会も増えていくことが予想されます。
思わぬトラブルや法律違反を招かないよう、以上のポイントを確認したうえで活用されてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2021年1月現在の法令・情報等に基づいています。