一定の地域に集中的に出店する『ドミナント戦略』の良し悪し
今の時代、大手コンビニエンスストアやスーパー、ファミリーレストランなどでは、複数の店舗を同じエリアに集中的に展開していく『ドミナント戦略』と呼ばれる手法をとることが主流になっています。
ドミナント戦略は、そのエリアの市場を独占でき、配送効率がアップするメリットがある一方で、同じチェーンであるにもかかわらず、顧客の奪い合いが起きるなどのデメリットもあります。
今回は、事業者ならば知っておきたい、ドミナント戦略について考察します。
ドミナント戦略は、そのエリアの市場を独占でき、配送効率がアップするメリットがある一方で、同じチェーンであるにもかかわらず、顧客の奪い合いが起きるなどのデメリットもあります。
今回は、事業者ならば知っておきたい、ドミナント戦略について考察します。
シェアの独占、コスト軽減などメリットは多い
『ドミナント(dominant)』は、日本語で『支配的』や『独占的』、『優性』などと訳される言葉で、その言葉の意味どおり、ある一定の地域に店舗を集中させて、その地域の市場の独占を狙うマーケティング手法のことをドミナント戦略といいます。
日本では大手コンビニチェーン『セブン-イレブン』が経営戦略として取り入れたことで、一般的に広く知られるようになりました。
セブン-イレブンは、1974年の創業当時から特定の地域に集中的に出店することで、そのブランド価値を高めてきており、同年5月に第1号店となる豊洲店をオープンさせた後は、同じ江東区に複数の店舗をオープンさせました。
国内小売業で初めて2万店舗を突破したセブン-イレブンの成功は、ドミナント戦略を取り入れたからだともいわれています。
また、ドラッグストアチェーンで有名な『スギ薬局』も、愛知県西尾市にその第1号店を創業後、ドミナント戦略により、人口が多い地域や医師・薬剤師の数が多い地域に重点的に出店をしてきたことで知られています。
現在の店舗は、中部エリア500店舗、関西エリア471店舗、関東エリア370店舗、北陸エリア30店舗であり(2020年11月時点)、東名阪エリアに多数の店舗があることがわかります。
コーヒーチェーン店の『スターバックスコーヒー』も、アメリカでドミナント戦略による急成長を遂げており、日本でも都市圏に集中的に出店する戦略をとっています。
ドミナント戦略の効果の一つには、ライバルチェーンの出店阻止があります。
自社の店が同じエリアに1店舗しかない場合、競合他社が進出してくる可能性は高いですが、複数の店舗が集中的に出店しているエリアでは、ライバル社も新規参入に及び腰になってしまうものです。
また、ドミナント戦略の最大の効果は、シェアを独占でき、商品配送の効率化が図れることにあります。
店舗同士が離れていると、配送に時間がかかってしまい、人件費や輸送費などのコストがかさんでしまいます。
特にPOS(販売時点情報管理)システムなどで商品を管理している小売店では、商品配送の時間をいかに短くできるかが課題でもあるでしょう。
それぞれの店舗間が近ければ、それだけ配送効率も上がります。
配送時間が短くなったことで、スーパーやコンビニなどでは、野菜や鮮魚、精肉などの生鮮食品を新鮮なまま届けられるようにもなりました。
さらに、フランチャイズ展開している店舗の場合であれば、自社のマネージャーやスーパーバイザーの店舗巡回も楽になり、経営指導をスムーズに行うことができます。
出店には地域の客層やニーズの掘り起こしなどの現地調査が必要不可欠ですが、ドミナント戦略であれば1店舗分の調査で済みます。
また、地域に複数の店舗があることで人々の目に触れやすくなり、知名度の向上も期待できるでしょう。
被害が拡大しやすいというデメリットもある
このように多くのメリットを持つドミナント戦略ですが、弱点がないわけではありません。
たとえば、その地域で災害が起きた際には、店舗を集中させていたせいで、そのエリア全ての店舗が一斉に被害を受けてしまいます。
そのエリアの売上も一気に下がり、また修繕費もかさんでしまうのです。
もし、店舗同士が離れていれば、被害は小規模で済みますし、売上に関しても他店舗がカバーできるかもしれません。
自然災害以外にも、新規の幹線道路ができたせいで交通量が減ってしまったり、新規宅地の開発により人の流れに変動が起きたりと、状況が変わる外的要因はさまざまあります。
これらの変化があったときに、より大きな影響を受けてしまうのがドミナント戦略のデメリットだといえるでしょう。
ほかにも、集中的に出店しすぎたせいで、同じチェーンでありながら顧客の奪い合いが起きてしまう可能性もあります。
その地域のシェアの上限は決まっており、上限を超えて売上が伸びることはありえません。
つまり、いくらドミナント戦略が有効だからといっても、各店舗間の距離はよく考える必要があります。
また、集中して店舗を出す場合には、都市部などできるだけシェアの上限値が高いエリアに的を絞るのが定石です。
過疎化が進んで人の少ないエリアに集中的に出店しても、共倒れになってしまいます。
ドミナント戦略は非常に効果のあるマーケティング手法ではありますが、一方で大きなリスクも抱えた戦略であるといえます。
特にチェーン展開を視野に入れて出店場所を探す際には、メリットとデメリットを把握して、慎重に判断しましょう。
※本記事の記載内容は、2020年12月現在の法令・情報等に基づいています。
『ドミナント(dominant)』は、日本語で『支配的』や『独占的』、『優性』などと訳される言葉で、その言葉の意味どおり、ある一定の地域に店舗を集中させて、その地域の市場の独占を狙うマーケティング手法のことをドミナント戦略といいます。
日本では大手コンビニチェーン『セブン-イレブン』が経営戦略として取り入れたことで、一般的に広く知られるようになりました。
セブン-イレブンは、1974年の創業当時から特定の地域に集中的に出店することで、そのブランド価値を高めてきており、同年5月に第1号店となる豊洲店をオープンさせた後は、同じ江東区に複数の店舗をオープンさせました。
国内小売業で初めて2万店舗を突破したセブン-イレブンの成功は、ドミナント戦略を取り入れたからだともいわれています。
また、ドラッグストアチェーンで有名な『スギ薬局』も、愛知県西尾市にその第1号店を創業後、ドミナント戦略により、人口が多い地域や医師・薬剤師の数が多い地域に重点的に出店をしてきたことで知られています。
現在の店舗は、中部エリア500店舗、関西エリア471店舗、関東エリア370店舗、北陸エリア30店舗であり(2020年11月時点)、東名阪エリアに多数の店舗があることがわかります。
コーヒーチェーン店の『スターバックスコーヒー』も、アメリカでドミナント戦略による急成長を遂げており、日本でも都市圏に集中的に出店する戦略をとっています。
ドミナント戦略の効果の一つには、ライバルチェーンの出店阻止があります。
自社の店が同じエリアに1店舗しかない場合、競合他社が進出してくる可能性は高いですが、複数の店舗が集中的に出店しているエリアでは、ライバル社も新規参入に及び腰になってしまうものです。
また、ドミナント戦略の最大の効果は、シェアを独占でき、商品配送の効率化が図れることにあります。
店舗同士が離れていると、配送に時間がかかってしまい、人件費や輸送費などのコストがかさんでしまいます。
特にPOS(販売時点情報管理)システムなどで商品を管理している小売店では、商品配送の時間をいかに短くできるかが課題でもあるでしょう。
それぞれの店舗間が近ければ、それだけ配送効率も上がります。
配送時間が短くなったことで、スーパーやコンビニなどでは、野菜や鮮魚、精肉などの生鮮食品を新鮮なまま届けられるようにもなりました。
さらに、フランチャイズ展開している店舗の場合であれば、自社のマネージャーやスーパーバイザーの店舗巡回も楽になり、経営指導をスムーズに行うことができます。
出店には地域の客層やニーズの掘り起こしなどの現地調査が必要不可欠ですが、ドミナント戦略であれば1店舗分の調査で済みます。
また、地域に複数の店舗があることで人々の目に触れやすくなり、知名度の向上も期待できるでしょう。
被害が拡大しやすいというデメリットもある
このように多くのメリットを持つドミナント戦略ですが、弱点がないわけではありません。
たとえば、その地域で災害が起きた際には、店舗を集中させていたせいで、そのエリア全ての店舗が一斉に被害を受けてしまいます。
そのエリアの売上も一気に下がり、また修繕費もかさんでしまうのです。
もし、店舗同士が離れていれば、被害は小規模で済みますし、売上に関しても他店舗がカバーできるかもしれません。
自然災害以外にも、新規の幹線道路ができたせいで交通量が減ってしまったり、新規宅地の開発により人の流れに変動が起きたりと、状況が変わる外的要因はさまざまあります。
これらの変化があったときに、より大きな影響を受けてしまうのがドミナント戦略のデメリットだといえるでしょう。
ほかにも、集中的に出店しすぎたせいで、同じチェーンでありながら顧客の奪い合いが起きてしまう可能性もあります。
その地域のシェアの上限は決まっており、上限を超えて売上が伸びることはありえません。
つまり、いくらドミナント戦略が有効だからといっても、各店舗間の距離はよく考える必要があります。
また、集中して店舗を出す場合には、都市部などできるだけシェアの上限値が高いエリアに的を絞るのが定石です。
過疎化が進んで人の少ないエリアに集中的に出店しても、共倒れになってしまいます。
ドミナント戦略は非常に効果のあるマーケティング手法ではありますが、一方で大きなリスクも抱えた戦略であるといえます。
特にチェーン展開を視野に入れて出店場所を探す際には、メリットとデメリットを把握して、慎重に判断しましょう。
※本記事の記載内容は、2020年12月現在の法令・情報等に基づいています。