急増する『希望退職者』の募集。労使間のトラブルに注意!
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、多くの業界が深刻なダメージを受けた2020年。
業績悪化に伴う人員削減のため、『早期退職者』『希望退職者』を募る企業も増えてきています。
希望退職は、会社側から退職を希望する従業員を募るため、労使間のトラブルが起きにくいと思われるかもしれません。
しかし、きちんと手順を追って進めていかないと、思わぬトラブルに発展し、従業員から労働審判や訴訟などを起こされる危険性もあります。
そこで今回は、希望退職制度の基礎知識と、スムーズに実行するための方法や注意点を解説します。
業績悪化に伴う人員削減のため、『早期退職者』『希望退職者』を募る企業も増えてきています。
希望退職は、会社側から退職を希望する従業員を募るため、労使間のトラブルが起きにくいと思われるかもしれません。
しかし、きちんと手順を追って進めていかないと、思わぬトラブルに発展し、従業員から労働審判や訴訟などを起こされる危険性もあります。
そこで今回は、希望退職制度の基礎知識と、スムーズに実行するための方法や注意点を解説します。
早期・希望退職の意義と位置づけ
希望退職制度とは、会社が従業員の自主的な退職を募る仕組みのことをいいます。
東京商工リサーチの調査によれば、2020年上半期に『早期・希望退職者』を募った上場企業は41社にのぼり、昨年2019年1年間の35社を早くも上回りました。
大手不動産会社の株式会社レオパレス21や、大手コンビニエンスストアの株式会社ファミリーマートが希望退職者募集に踏み切ったニュースに驚いた方も多いのではないでしょうか。
基本的に希望退職は人件費を圧縮し、業績回復を図るために行われるものです。
一方、『早期退職』も同様に従業員のなかから退職を希望する者を募りますが、こちらは人員のバランス調整のために行われることがほとんどです。
組織全体や各部署の人員構成を整えたり、従業員の人生の選択肢を広げたりすることを目的とします。
ただし、それぞれの意味合いは異なりますが、定年を前に退職者を募るという部分は共通するため、『希望退職』と『早期退職』を同じものとして取り扱う企業もあるようです。
原則的に、会社側が従業員を一方的に解雇することは禁止されており、解雇するには、客観的合理性と社会通念上相当な理由が必要になります。
もし、客観的合理性と社会通念上相当な理由なく従業員を解雇した場合には不当解雇となり、解雇権濫用とみなされ、解雇は無効とされます。
業績悪化によって従業員を解雇することは整理解雇といい、一般的には『リストラ』と呼ばれています。
リストラには、解雇回避努力義務の履行や従業員選定の合理性などの条件が必要になってきます。
このリストラの前段階に行うこととして、『希望退職』が位置づけられているのです。
企業にとって、希望退職によって人員を減らすことは、人件費の削減に繋がります。
特に給与が高額となっている一定以上の年齢層の従業員が自発的に退職すれば、大きな人件費の圧縮効果が見込めます。
『希望退職』による労働紛争を回避するには
希望退職には、会社側にさまざまなデメリットがあることも知っておかなければなりません。
まず、希望退職者を募るためには、退職金を割増で払う必要があり、割増分が会社の大きな負担になる可能性があります。
人件費の削減のために行った希望退職が、結局、負担になってしまうのであれば、意味がありません。
消滅する人件費と、割増しした分の退職金とのバランスを考えて、希望退職者を募る必要があるでしょう。
また、従業員の年齢や勤務年数に合わせた割増分を設定することで、会社の負担を抑えることもできます。
そして、もう一つの大きなデメリットは、労使間トラブルの危険性があることです。
希望退職では、優秀な従業員に辞められてしまうのを防止するため、ほとんどの場合に、退職の条件として『会社の承諾』を設定します。
会社の承諾を条件にすれば、優秀な従業員が希望退職に応募してきたとしても、不承認とすることで会社に留まってもらうことができるわけです。
しかし、過去にはこの『会社の承諾』を巡って、さまざまな労働紛争が発生しています。
たとえば、希望退職に応じたAさんに対しては退職を認め、同じく希望退職に応じたBさんには退職を認めないということが起きるため、『不公正な扱い』として労働紛争が起きました。
判例では、会社の承諾は労働者に不利益を与えるものではなく、違法ではないとされることがほとんどですが、制度の運用の仕方によっては、大きなトラブルに発展する危険性もはらんでいるのです。
希望退職者との労働紛争を起こさないためには、まず希望退職制度の条件を明確に定めたうえで、全社員に書面などを残す形で周知させる必要があります。
そして、希望退職者への『会社の承諾』も書面で取り交わすこととし、万が一、労使トラブルに発展しても、証拠が残るようにします。
このように労働紛争の危険性もある希望退職制度ですが、人件費削減のためにはやむを得ず行わなければいけないケースも増えています。
まずは、人件費の圧縮によって業績回復が望めるのかという視点で自社の経営状態をチェックしたうえで、希望退職の条件を設定していきましょう。
※本記事の記載内容は、2020年9月現在の法令・情報等に基づいています。
希望退職制度とは、会社が従業員の自主的な退職を募る仕組みのことをいいます。
東京商工リサーチの調査によれば、2020年上半期に『早期・希望退職者』を募った上場企業は41社にのぼり、昨年2019年1年間の35社を早くも上回りました。
大手不動産会社の株式会社レオパレス21や、大手コンビニエンスストアの株式会社ファミリーマートが希望退職者募集に踏み切ったニュースに驚いた方も多いのではないでしょうか。
基本的に希望退職は人件費を圧縮し、業績回復を図るために行われるものです。
一方、『早期退職』も同様に従業員のなかから退職を希望する者を募りますが、こちらは人員のバランス調整のために行われることがほとんどです。
組織全体や各部署の人員構成を整えたり、従業員の人生の選択肢を広げたりすることを目的とします。
ただし、それぞれの意味合いは異なりますが、定年を前に退職者を募るという部分は共通するため、『希望退職』と『早期退職』を同じものとして取り扱う企業もあるようです。
原則的に、会社側が従業員を一方的に解雇することは禁止されており、解雇するには、客観的合理性と社会通念上相当な理由が必要になります。
もし、客観的合理性と社会通念上相当な理由なく従業員を解雇した場合には不当解雇となり、解雇権濫用とみなされ、解雇は無効とされます。
業績悪化によって従業員を解雇することは整理解雇といい、一般的には『リストラ』と呼ばれています。
リストラには、解雇回避努力義務の履行や従業員選定の合理性などの条件が必要になってきます。
このリストラの前段階に行うこととして、『希望退職』が位置づけられているのです。
企業にとって、希望退職によって人員を減らすことは、人件費の削減に繋がります。
特に給与が高額となっている一定以上の年齢層の従業員が自発的に退職すれば、大きな人件費の圧縮効果が見込めます。
『希望退職』による労働紛争を回避するには
希望退職には、会社側にさまざまなデメリットがあることも知っておかなければなりません。
まず、希望退職者を募るためには、退職金を割増で払う必要があり、割増分が会社の大きな負担になる可能性があります。
人件費の削減のために行った希望退職が、結局、負担になってしまうのであれば、意味がありません。
消滅する人件費と、割増しした分の退職金とのバランスを考えて、希望退職者を募る必要があるでしょう。
また、従業員の年齢や勤務年数に合わせた割増分を設定することで、会社の負担を抑えることもできます。
そして、もう一つの大きなデメリットは、労使間トラブルの危険性があることです。
希望退職では、優秀な従業員に辞められてしまうのを防止するため、ほとんどの場合に、退職の条件として『会社の承諾』を設定します。
会社の承諾を条件にすれば、優秀な従業員が希望退職に応募してきたとしても、不承認とすることで会社に留まってもらうことができるわけです。
しかし、過去にはこの『会社の承諾』を巡って、さまざまな労働紛争が発生しています。
たとえば、希望退職に応じたAさんに対しては退職を認め、同じく希望退職に応じたBさんには退職を認めないということが起きるため、『不公正な扱い』として労働紛争が起きました。
判例では、会社の承諾は労働者に不利益を与えるものではなく、違法ではないとされることがほとんどですが、制度の運用の仕方によっては、大きなトラブルに発展する危険性もはらんでいるのです。
希望退職者との労働紛争を起こさないためには、まず希望退職制度の条件を明確に定めたうえで、全社員に書面などを残す形で周知させる必要があります。
そして、希望退職者への『会社の承諾』も書面で取り交わすこととし、万が一、労使トラブルに発展しても、証拠が残るようにします。
このように労働紛争の危険性もある希望退職制度ですが、人件費削減のためにはやむを得ず行わなければいけないケースも増えています。
まずは、人件費の圧縮によって業績回復が望めるのかという視点で自社の経営状態をチェックしたうえで、希望退職の条件を設定していきましょう。
※本記事の記載内容は、2020年9月現在の法令・情報等に基づいています。