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意外と知らない? すべてを失うわけではない『自己破産』

20.07.28
ビジネス【法律豆知識】
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“膨らんだ借金が返せなくなり、自己破産するまで追い詰められ、無一文になってしまった”。
世間一般的にいう『自己破産』について、このようなイメージを持っている人も多いでしょう。
しかし、自己破産とは、無一文になる手続きではなく、生活の再建を目指す手続きのはじめの一歩です。
自己破産の基礎的な知識を確認しましょう。
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破産しても自由に使える財産は残せる

借金などの債務が支払不能(もしくは債務超過)になったからといって、自動的に自己破産の手続がはじまるわけではありません。
自己破産の手続を開始するには、破産法で定められている管轄の地方裁判所に対して、自己破産の申立をする必要があります。

破産の申立をすると、原則として、その時点で保有していた財産は、全て管財人が管理することになります。
しかし、そうはいっても、人が生活していくためには、家賃・水道光熱費・食費など必要不可欠な出費があります。
そのため、破産法は、自己破産する人が自由に使える財産である『自由財産』を認めています。
自由財産の代表的なものとしては、

(1)99万円以下の現金
(2)1カ月間の生活に必要な食料および燃料
(3)差押禁止財産(生活に欠くことができない衣類、寝具、家具、台所用品、学校等における学習に必要な書類および器具等)

があります。
(3)の差押禁止財産に含まれる家具とは、整理タンス、ベッド、台所用品、冷暖房機、冷蔵庫、電子レンジ、テレビ、ラジオ、掃除機、パソコンなどです。
もっとも、大型テレビや、テレビが何台もある場合には、差押禁止財産から外れる可能性があります。

こうしてみると、たとえば独身一人暮らしの生活において、破産により自分で自由に処分できなくなる財産は、ほとんどないといってよいでしょう。


現金なら99万円までOK。自由財産のカラクリ

自由財産は、破産法という法律に定められています。
そのため、法律に書いていない財産は自由財産ということにならず、破産を申し立てた人は、自由に処分することができなくなります
破産法の自由財産として定められていない財産で代表的なものは、預金(貯金)や車があります。

つまり、現金であれば99万円を持っていたとしても、自由財産として自由に使えるのに、これが口座にはいっていると途端に自由に使えなくなってしまいます。
しかし、現実的に、多額の現金を手元に置いている人は非常に少数ですし、基本的にすぐに必要としない現金は、口座に入れているはずです。
破産する際に口座から引き出して現金化すれば自由に使うことができ、引き出していない場合は自由に使うことができないというのは、あまりにも不自然な気がしますよね。

こうした場合には、自由財産の拡張という手続を取ることになります。
自由財産の拡張とは、裁判所が本来自由財産でないものを自由財産として認めるという決定をするものです。
さらに、自由財産の拡張をいちいち判断することなく、自由財産として扱われる財産もあります。
どのような財産が拡張の手続をする必要なく自由財産として扱われるのかについては、各裁判所で基準が異なります(これを換価基準といいます)。

そのほかにも、買い手がつかない土地や回収の見込みがない債権などは、管財人がそれらの権利を放棄し、自由財産として利用できることもあります。

このように、自己破産をしても、無一文になるということはありません。
むしろ破産開始決定後の給与等は、それまでの債権者に取られることなく、生活の再建に全額利用できるようになりますし、日常生活に必要な家具等もそのまま使えるのです。

なお、住宅ローンがある場合は、家を手放すほかありません。
どうしても家を手放したくないのであれば、『個人再生』という法的手続もあります。
一定の要件を満たせば、住宅ローンを引き続きそのまま負担する形で債務の整理が可能です。

クレジットカードや住宅ローン、奨学金など、現代において借金なく生活することは困難です。
急病などの緊急事態により、返せなくなることもあるでしょう。
そんなとき、返済不可能な額の借金なら自己破産してリセットするという方法もあります。
打つ手がなく悩むことになった場合は、公的機関や専門家に相談するのもよいかもしれません。


※本記事の記載内容は、2020年7月現在の法令・情報等に基づいています。