介護事業所の『認証評価制度』は人材不足の打開策となるか
団塊の世代が75歳以上となる2025年に向け、介護サービスの需要はより一層増加していくことが予想されており、介護業界では、慢性的な人材不足を解消することが急務となっています。
そのため、介護人材の裾野を広げ、シニアや外国人、介護未経験者を含む幅広い人材を活用するとともに、介護業界の過酷なイメージを改善し、求職者が働きやすい職場を選べるよう後押ししていくことが求められています。
今回は、その取り組みの一つとして厚生労働省が2019年4月1日よりスタートさせた『人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度(以下、認証評価制度)』をご紹介します。
そのため、介護人材の裾野を広げ、シニアや外国人、介護未経験者を含む幅広い人材を活用するとともに、介護業界の過酷なイメージを改善し、求職者が働きやすい職場を選べるよう後押ししていくことが求められています。
今回は、その取り組みの一つとして厚生労働省が2019年4月1日よりスタートさせた『人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度(以下、認証評価制度)』をご紹介します。
優良事業所を公表して“見える”化する
厚生労働省が、介護現場の深刻な人材不足を打開するためにスタートした『認証評価制度』。
認証評価制度とは、労働時間の削減や休暇の取得など労働環境を改善するための仕組みづくりや“昇給・昇格”などのキャリアアップの仕組みづくりなどを実施した介護事業所のなかから『優良』と認めた事業所を、都道府県のホームページなどで公表する制度です。
評価を実施することで、働きやすい事業所を“見える”化し、介護スタッフの離職防止につなげることを目的としています。
認証評価制度は、京都府が実施している『きょうと福祉人材育成認証制度』をベースに、制度化したものです。
『きょうと福祉人材育成認証制度』では、下記の4分野について、それぞれに設けられているポイント(計17項目)をすべて満たした事業所が、認証を受けられる仕組みになっています。
そして、さらに高度な基準をクリアした事業所には“福祉・介護業界の一流企業の証”となる『上位認証』が与えられます。
【きょうと福祉人材育成認証制度の認証基準4分野】
(1)新人教育が充実しているか
・新規採用者育成計画の策定
・採用者研修の実施 など
(2)未来を描ける職場か
・キャリアパス制度の導入
・人材育成計画の策定
・資格取得に対する支援 など
(3)社員を大切にする職場か
・休暇取得・労働時間縮減のための取り組みの実施
・育児、介護を両立できる取り組みの実施 など
(4)外部との交流に積極的か
・地域や学校との交流
・第三者評価の受診 など
制度導入の背景に“深刻な人材不足”
『認証評価制度』導入の背景には、介護業界における高水準の有効求人倍率と慢性的な人材不足が影響しています。
介護業界の有効求人倍率は、現在のところ約4倍で推移しています。
これは100人の求職者に対して400社の介護事業所が求人しているということになり、つまりは75%の介護事業所が採用できないということを意味しています。
厚生労働省が公表している『一般職業紹介状況』によると、2018年度の全産業の平均有効求人倍率は1.62倍です。
これと比較すると2倍以上の競争率であることからも、介護業界の人材不足を解消することがいかに困難であるかがわかります。
制度の普及で、業界全体の底上げを
こうした事態を打破する一手となることが期待されている『認証評価制度』。
その効果としては、認証を取得した介護事業所を都道府県ホームページなどに公表するだけでなく、ハローワーク、学校、求人情報サイトなどと連携することにより、求職者の職場選びに役立ててもらえることがあげられます。
また、事業所としても、採用活動などに認証マークを活用して求職者にアピールすることができますし、業界全体としても、多数の事業所が人材育成に積極的に取り組んでいることを知ってもらうことで、介護業界に対する漠然とした不安の解消につなげられます。
しかし、この認証評価制度の具体的な構築と運営は、厚生労働省が定めた認証基準を目安に各都道府県に委ねられています。
そのため、2019年4月1日時点において約40%の都道府県が『実施を検討中』または『実施予定なし』となっており、全国で足並みがそろっているとはいえません。
今後の課題としては、一過性ではなく恒久的な制度となるよう制度の見直しを定期的に実施し、中長期的に継続することが大切と思われます。
そのためには、“見える化”を実現した優良事業所が、より成長できるよう、全都道府県が足並みを揃えて取り組み、介護業界全体の底上げへと導いていくことが必要なのではないでしょうか。
※本記事の記載内容は、2019年11月現在の法令・情報等に基づいています。
厚生労働省が、介護現場の深刻な人材不足を打開するためにスタートした『認証評価制度』。
認証評価制度とは、労働時間の削減や休暇の取得など労働環境を改善するための仕組みづくりや“昇給・昇格”などのキャリアアップの仕組みづくりなどを実施した介護事業所のなかから『優良』と認めた事業所を、都道府県のホームページなどで公表する制度です。
評価を実施することで、働きやすい事業所を“見える”化し、介護スタッフの離職防止につなげることを目的としています。
認証評価制度は、京都府が実施している『きょうと福祉人材育成認証制度』をベースに、制度化したものです。
『きょうと福祉人材育成認証制度』では、下記の4分野について、それぞれに設けられているポイント(計17項目)をすべて満たした事業所が、認証を受けられる仕組みになっています。
そして、さらに高度な基準をクリアした事業所には“福祉・介護業界の一流企業の証”となる『上位認証』が与えられます。
【きょうと福祉人材育成認証制度の認証基準4分野】
(1)新人教育が充実しているか
・新規採用者育成計画の策定
・採用者研修の実施 など
(2)未来を描ける職場か
・キャリアパス制度の導入
・人材育成計画の策定
・資格取得に対する支援 など
(3)社員を大切にする職場か
・休暇取得・労働時間縮減のための取り組みの実施
・育児、介護を両立できる取り組みの実施 など
(4)外部との交流に積極的か
・地域や学校との交流
・第三者評価の受診 など
制度導入の背景に“深刻な人材不足”
『認証評価制度』導入の背景には、介護業界における高水準の有効求人倍率と慢性的な人材不足が影響しています。
介護業界の有効求人倍率は、現在のところ約4倍で推移しています。
これは100人の求職者に対して400社の介護事業所が求人しているということになり、つまりは75%の介護事業所が採用できないということを意味しています。
厚生労働省が公表している『一般職業紹介状況』によると、2018年度の全産業の平均有効求人倍率は1.62倍です。
これと比較すると2倍以上の競争率であることからも、介護業界の人材不足を解消することがいかに困難であるかがわかります。
制度の普及で、業界全体の底上げを
こうした事態を打破する一手となることが期待されている『認証評価制度』。
その効果としては、認証を取得した介護事業所を都道府県ホームページなどに公表するだけでなく、ハローワーク、学校、求人情報サイトなどと連携することにより、求職者の職場選びに役立ててもらえることがあげられます。
また、事業所としても、採用活動などに認証マークを活用して求職者にアピールすることができますし、業界全体としても、多数の事業所が人材育成に積極的に取り組んでいることを知ってもらうことで、介護業界に対する漠然とした不安の解消につなげられます。
しかし、この認証評価制度の具体的な構築と運営は、厚生労働省が定めた認証基準を目安に各都道府県に委ねられています。
そのため、2019年4月1日時点において約40%の都道府県が『実施を検討中』または『実施予定なし』となっており、全国で足並みがそろっているとはいえません。
今後の課題としては、一過性ではなく恒久的な制度となるよう制度の見直しを定期的に実施し、中長期的に継続することが大切と思われます。
そのためには、“見える化”を実現した優良事業所が、より成長できるよう、全都道府県が足並みを揃えて取り組み、介護業界全体の底上げへと導いていくことが必要なのではないでしょうか。
※本記事の記載内容は、2019年11月現在の法令・情報等に基づいています。