業務委託契約を扱ううえで意識したい、契約としての法的性質
どのような業界・事業においても締結することが多い『業務委託契約』。
業務委託契約と一言でいっても、法的な観点からは契約によって性質が異なります。
そして、契約の法的性質に応じて、委託者と受託者の権利と義務が異なったり、法令違反のリスクが生じたり、委託者と受託者とで契約の解釈について紛争が生じたりするおそれもあります。
このようなことを未然に防ぐためにも、今回は業務委託契約の法的性質についてご説明します。
業務委託契約と一言でいっても、法的な観点からは契約によって性質が異なります。
そして、契約の法的性質に応じて、委託者と受託者の権利と義務が異なったり、法令違反のリスクが生じたり、委託者と受託者とで契約の解釈について紛争が生じたりするおそれもあります。
このようなことを未然に防ぐためにも、今回は業務委託契約の法的性質についてご説明します。
『請負契約』と『準委任契約』の違いとは?
業務委託契約において対象となる業務は多種多様ですが、大きく『モノに関する業務』と『サービスに関する業務』に分けられます。
モノに関する業務委託契約には、主に以下の契約があります。
・製造委託契約
・OEM契約
・商品の運送や保管に関する契約
サービスに関する業務委託契約には、主に以下の契約があります。
・人材派遣契約
・システムの開発委託や運用・保守に関する契約
・コンサルタント契約
・研究委託契約
業務委託契約は、法的には大きく『請負契約』と『準委任契約』に分けられます。
両者の主な違いは以下の点です。
契約書上、明確に区別するために、請負契約とするのであれば、仕事の完成義務について明記し、瑕疵担保責任(商品に欠陥があった場合、売り主が責任を取ること)の規定を盛り込むのがよいでしょう。
他方、準委任契約とするのであれば、善管注意義務(専門家として注意を払う義務)の規定や報告義務の規定を明記することをおすすめします。
請負契約と準委任契約の違いを次の5項目で説明していきます。
(1)目的及び義務
請負契約は、受託者が委託された仕事を完成することを目的とします(民法(以下省略)632条)。
受託者は委託者と合意した仕事の完成義務を負い、委託者はその完成を受託者に要求することができます。
他方、準委任契約は、受託者が委託された事務処理をすることを目的とします(643条、656条)。
受託者は善管注意義務を負うため(644条)、委託者は事務処理の過程に問題があった場合、善管注意義務違反の責任を受託者に追及することができます。
(2)解除権
請負契約では、委託者は原則として仕事完成前ならいつでも損害を賠償して解除できます(641条)。受託者は解除できません。
他方、準委任契約では、委託者と受託者のいずれもがいつでも解除できます。ただし、相手が不利な時に解除すると損害賠償責任を負います(651条)。
(3)瑕疵担保責任
請負契約では、受託者は仕事に瑕疵があれば瑕疵担保責任を負い、委託者は『修補請求』『損害賠償請求』『解除』ができます。
他方、準委任契約では、結果責任がないため、同責任はありません。
なお、2020年4月1日施行の改正民法では、瑕疵ではなく『契約不適合』という表現となり、委託者は、上記『修補請求』『損害賠償請求』『解除』に加え、『代金減額請求』ができます。
(4)報告義務
請負契約では、仕事を完成しさえすればよいため、報告義務はありません。
他方、準委任契約では、受託者は委託者の請求があれば、いつでも事務処理状況を報告し、委任事務の終了後は顛末の報告義務を負います(645条)。
(5)印紙税
請負契約書は、2号(または7号)文書に該当し、印紙を貼る必要があります。
他方、準委任契約書は印紙不要です。
業務委託契約を締結する際の注意点
いわゆる製作物供給契約が『売買契約』か『請負契約』かが問題になることがあります。
たとえば、売買とされると、商品に瑕疵があった場合、委託者は受託者に対し、商業上の取引では瑕疵担保責任に基づき6カ月間しか責任追及ができません(商法526条2項)。
他方、請負とされると、仕事の完成までの間はいつでも解除できますし、債務不履行責任(商事消滅時効の5年間)も瑕疵担保責任(仕事の目的物引渡時又は仕事終了時から1年間)も追及可能になります。
委託者が個人である受託者と業務委託契約を締結して業務を委託するケースでは、形式的には業務委託契約と称していても、実態としては、雇用契約(623条、労働契約法6条)に該当する可能性があります。
雇用契約であれば、労働基準法や労働契約法が適用され、社会保険の負担が生じます。
雇用契約かどうかは、種々の要素を考慮して、受託者が労働者性を有するか否かで判断します。
また、形式は請負契約であっても、実態が労働者派遣となっている場合はいわゆる偽装請負の状態となります。
業務委託契約を締結する際は、請負契約か準委任契約かを意識するとともに、雇用契約や労働者派遣契約に該当しないよう注意しましょう。
※本記事の記載内容は、2019年9月現在の法令・情報等に基づいています。
業務委託契約において対象となる業務は多種多様ですが、大きく『モノに関する業務』と『サービスに関する業務』に分けられます。
モノに関する業務委託契約には、主に以下の契約があります。
・製造委託契約
・OEM契約
・商品の運送や保管に関する契約
サービスに関する業務委託契約には、主に以下の契約があります。
・人材派遣契約
・システムの開発委託や運用・保守に関する契約
・コンサルタント契約
・研究委託契約
業務委託契約は、法的には大きく『請負契約』と『準委任契約』に分けられます。
両者の主な違いは以下の点です。
契約書上、明確に区別するために、請負契約とするのであれば、仕事の完成義務について明記し、瑕疵担保責任(商品に欠陥があった場合、売り主が責任を取ること)の規定を盛り込むのがよいでしょう。
他方、準委任契約とするのであれば、善管注意義務(専門家として注意を払う義務)の規定や報告義務の規定を明記することをおすすめします。
請負契約と準委任契約の違いを次の5項目で説明していきます。
(1)目的及び義務
請負契約は、受託者が委託された仕事を完成することを目的とします(民法(以下省略)632条)。
受託者は委託者と合意した仕事の完成義務を負い、委託者はその完成を受託者に要求することができます。
他方、準委任契約は、受託者が委託された事務処理をすることを目的とします(643条、656条)。
受託者は善管注意義務を負うため(644条)、委託者は事務処理の過程に問題があった場合、善管注意義務違反の責任を受託者に追及することができます。
(2)解除権
請負契約では、委託者は原則として仕事完成前ならいつでも損害を賠償して解除できます(641条)。受託者は解除できません。
他方、準委任契約では、委託者と受託者のいずれもがいつでも解除できます。ただし、相手が不利な時に解除すると損害賠償責任を負います(651条)。
(3)瑕疵担保責任
請負契約では、受託者は仕事に瑕疵があれば瑕疵担保責任を負い、委託者は『修補請求』『損害賠償請求』『解除』ができます。
他方、準委任契約では、結果責任がないため、同責任はありません。
なお、2020年4月1日施行の改正民法では、瑕疵ではなく『契約不適合』という表現となり、委託者は、上記『修補請求』『損害賠償請求』『解除』に加え、『代金減額請求』ができます。
(4)報告義務
請負契約では、仕事を完成しさえすればよいため、報告義務はありません。
他方、準委任契約では、受託者は委託者の請求があれば、いつでも事務処理状況を報告し、委任事務の終了後は顛末の報告義務を負います(645条)。
(5)印紙税
請負契約書は、2号(または7号)文書に該当し、印紙を貼る必要があります。
他方、準委任契約書は印紙不要です。
業務委託契約を締結する際の注意点
いわゆる製作物供給契約が『売買契約』か『請負契約』かが問題になることがあります。
たとえば、売買とされると、商品に瑕疵があった場合、委託者は受託者に対し、商業上の取引では瑕疵担保責任に基づき6カ月間しか責任追及ができません(商法526条2項)。
他方、請負とされると、仕事の完成までの間はいつでも解除できますし、債務不履行責任(商事消滅時効の5年間)も瑕疵担保責任(仕事の目的物引渡時又は仕事終了時から1年間)も追及可能になります。
委託者が個人である受託者と業務委託契約を締結して業務を委託するケースでは、形式的には業務委託契約と称していても、実態としては、雇用契約(623条、労働契約法6条)に該当する可能性があります。
雇用契約であれば、労働基準法や労働契約法が適用され、社会保険の負担が生じます。
雇用契約かどうかは、種々の要素を考慮して、受託者が労働者性を有するか否かで判断します。
また、形式は請負契約であっても、実態が労働者派遣となっている場合はいわゆる偽装請負の状態となります。
業務委託契約を締結する際は、請負契約か準委任契約かを意識するとともに、雇用契約や労働者派遣契約に該当しないよう注意しましょう。
※本記事の記載内容は、2019年9月現在の法令・情報等に基づいています。