マイケル・ポーターのCSV(クリエイティング・シェアド・バリュー)
前回は、マーケティング界の重鎮コトラー教授の
マーケティング3.0についてご紹介しました。
コトラー教授によれば、
これからのマーケティングの目的は
「世界をより良い場所にすること」
になるということでした。
コトラーとほぼ時を同じくして、
経営戦略論の大家マイケル・ポーターも
似たニュアンスの論を展開し始めます。
それが、CSV(クリエイティング・シェアド・バリュー)
つまり“共有価値の創造”論です。
マーケティング3.0についてご紹介しました。
コトラー教授によれば、
これからのマーケティングの目的は
「世界をより良い場所にすること」
になるということでした。
コトラーとほぼ時を同じくして、
経営戦略論の大家マイケル・ポーターも
似たニュアンスの論を展開し始めます。
それが、CSV(クリエイティング・シェアド・バリュー)
つまり“共有価値の創造”論です。
佐藤達郎のマーケティング論
ポーターによれば、
「社会と企業の間で価値が共有されるようになるのは、
社会だけでなく企業も利益を得る」し、
「長い目で見れば、より持続可能な競争上の
ポジションを企業は作り上げることが」できます。
また「どんな企業でも価値ある提案をするためには、
社会的な意義を持たせる必要」があり、
「今日では顧客も取引先も、事業戦略に社会的な
価値のある企業を評価」するのだと述べています。
このポーターの提言は、共有価値=シェアド・バリューが考え方のコアにあるのですが、
その前にわざわざクリエイティングなどという言葉をつけてCSVにしているのは、
CSRとの対比で語りたかったからだと思います。
CSRはコーポレート・ソーシャル・リスポンシビリティの略で、
今日では広く企業で採用され、CSR部といった部署を持つ会社も少なくありません。
企業が利益の一部を、なんらかの社会貢献活動に使うといったものが主流です。
CSVはCSRとは違うのだ、とポーターは強調します。
CSRの価値は「善行」だが、CSVの価値は「コストと比較した経済的便益と社会的便益」であり、
CSRが「任意、あるいは外圧によって行われる」のに対して、
CSVは「競争に不可欠」であるとしています。
さらにCSRは「利益の最大化とは別物」だが、CSVは「利益の最大化に不可欠」で、
CSRは「テーマは外部の報告書や個人の嗜好によって決まる」が、
CSVでは「テーマは企業ごとに異なり、内発的」です。
そして、CSRは「企業の業績やCSR予算の制限を受ける」が、
CSVは「企業の予算全体を再編する」とも述べています。
CSVは、例えばハイブリッド車を思い浮かべると理解しやすいのではないでしょうか。
自動車メーカーがハイブリッド車を開発し、
燃費の良さもさることながら、ガソリン車よりも環境に良いという理由で
割高なハイブリッドカーを買う消費者が少なからずいる。
これは、それら消費者と自動車メーカーが
「少しでも環境に良い自動車を!」という価値を共有している例だと言えます。
さて、次回からは、世界最高峰の広告・マーケティングの祭典、
カンヌライオンズの今年の受賞作から、目立った事例と傾向を紹介していきます。
次回の「佐藤達郎のマーケティング論」は
『カンヌライオンズ2014から、広告・マーケティングの最前線をレポート:その1』をお届けします。
[プロフィール]
佐藤 達郎(さとう・たつろう)
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。
[記事提供]
(運営:株式会社アックスコンサルティング)
ポーターによれば、
「社会と企業の間で価値が共有されるようになるのは、
社会だけでなく企業も利益を得る」し、
「長い目で見れば、より持続可能な競争上の
ポジションを企業は作り上げることが」できます。
また「どんな企業でも価値ある提案をするためには、
社会的な意義を持たせる必要」があり、
「今日では顧客も取引先も、事業戦略に社会的な
価値のある企業を評価」するのだと述べています。
このポーターの提言は、共有価値=シェアド・バリューが考え方のコアにあるのですが、
その前にわざわざクリエイティングなどという言葉をつけてCSVにしているのは、
CSRとの対比で語りたかったからだと思います。
CSRはコーポレート・ソーシャル・リスポンシビリティの略で、
今日では広く企業で採用され、CSR部といった部署を持つ会社も少なくありません。
企業が利益の一部を、なんらかの社会貢献活動に使うといったものが主流です。
CSVはCSRとは違うのだ、とポーターは強調します。
CSRの価値は「善行」だが、CSVの価値は「コストと比較した経済的便益と社会的便益」であり、
CSRが「任意、あるいは外圧によって行われる」のに対して、
CSVは「競争に不可欠」であるとしています。
さらにCSRは「利益の最大化とは別物」だが、CSVは「利益の最大化に不可欠」で、
CSRは「テーマは外部の報告書や個人の嗜好によって決まる」が、
CSVでは「テーマは企業ごとに異なり、内発的」です。
そして、CSRは「企業の業績やCSR予算の制限を受ける」が、
CSVは「企業の予算全体を再編する」とも述べています。
CSVは、例えばハイブリッド車を思い浮かべると理解しやすいのではないでしょうか。
自動車メーカーがハイブリッド車を開発し、
燃費の良さもさることながら、ガソリン車よりも環境に良いという理由で
割高なハイブリッドカーを買う消費者が少なからずいる。
これは、それら消費者と自動車メーカーが
「少しでも環境に良い自動車を!」という価値を共有している例だと言えます。
さて、次回からは、世界最高峰の広告・マーケティングの祭典、
カンヌライオンズの今年の受賞作から、目立った事例と傾向を紹介していきます。
次回の「佐藤達郎のマーケティング論」は
『カンヌライオンズ2014から、広告・マーケティングの最前線をレポート:その1』をお届けします。
[プロフィール]
佐藤 達郎(さとう・たつろう)
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。
[記事提供]
(運営:株式会社アックスコンサルティング)