建設業なら知っておくべき、消費税増税の影響
いよいよ10月から消費税が10%に増税されます。
今回の増税では、軽減税率やインボイス制度の導入が予定されていることから、これまでに比べて混乱が生じることが予想されています。
軽減税率の影響を大きく受ける飲食業関連が取り上げられることが多いですが、建設業界や不動産業界にもさまざまな影響があります。
そこで今回は、消費税増税に関連するポイントや注意点についてご紹介します。
今回の増税では、軽減税率やインボイス制度の導入が予定されていることから、これまでに比べて混乱が生じることが予想されています。
軽減税率の影響を大きく受ける飲食業関連が取り上げられることが多いですが、建設業界や不動産業界にもさまざまな影響があります。
そこで今回は、消費税増税に関連するポイントや注意点についてご紹介します。
税率は『引き渡し日』を基準に適用
まず押さえておきたいのが、建設請負工事は完成引き渡し時の消費税が適用されるため、『引き渡し日』によって適用される税率が変わるという点です。
消費税の引き上げは10月1日に予定されているので、9月30日までに住宅等の引き渡しが完了していれば消費税は8%のままで、10月1日以降となれば10%が適用されることになります。
これに伴い、「増税前に家を建てたい、買いたい」という駆け込み需要が起こり、一時的な人手不足によって工期に間に合わない業者が出てくることも考えられます。
その結果、「増税までに引き渡しができなかったから」と顧客に対して10%の消費税を請求するわけにはいかず、請負業者側で差額の2%を負担するという事態が起きる可能性もあります。
そこで、『引き渡し日』が施行日前から施行日後に変更になるおそれがある場合、あらかじめ消費税率の引き上げに伴い発生する消費税の増額相当分の取り扱いについて、契約書に明記しておくなどの対策を取っておくことが望ましいといえます。
契約日が3月31日までなら8%が適用
ただし、建設工事は工期が長く、請負契約日から建築物の引き渡しまでに数カ月、時には年単位の時間がかかることもあるため、これを考慮した『経過措置』が取られています。
2019年3月31日までに請負契約を終えていれば、引き渡しが10月1日以降になったとしても8%の消費税が適用されるというものです。
注意したいのが、工事期間中に工事の内容が変わってしまったケースです。
たとえば、2019年3月31日までに請負契約を終えていても、4月1日以降に、最初締結した請負契約の内容とはまったく違う契約内容になることは珍しくありません。
この場合は『契約の変更』となり、経過措置は適用されず、原則として工事全体に対して消費税率10%が適用されます。
ただし、“塀を追加する”などの微細な工事の追加であれば、『契約の変更』ではなく『追加工事』で済むこともあります。
追加工事であれば、最初に締結していた工事の請負契約分は8%の消費税率が適用され、追加工事についてのみ10%が適用されます。
建材などの仕入れや外注工事への影響は?
さらに、仕入れに関することも押さえておく必要があります。
仕入れには大きく二つのパターンがあります。
一つが、建材などで売買契約を結んで購入すること。
そしてもう一つが、外注工事を依頼する形での仕入れです。
建材の売買契約においては、『引き渡しを受けた日』の税率が適用となると定められており、経過措置は設けられていません。
一方、外注工事の支払いについては、先述した経過措置が適用されます。
では、元請業者が請負契約を締結したのが2019年3月31日までだったとしても、元請業者と下請業者が請負契約を締結するのが4月1日以降になるときには、どのような措置を取ればよいのでしょうか。
原則として、このようなケースでは下請業者との下請契約には経過措置は適用されないため、下請契約については引き渡しが10月1日以降であれば消費税率10%が適用されることになります。
ただし、消費税は原則として元請契約の消費税額から下請契約の消費税額を控除した金額を納付するため、元請契約と下請契約で税率が変わったとしても、消費税が適正に転嫁されている限り損益に影響することはありません。
ですから、ここはあまり気にしなくてもよいところです。
建設業界においては、10%の消費税率が適用となるタイミングや経過措置を正しく理解するとともに、顧客との間でトラブルが起きないように必要な説明をしておくことが大切です。
インボイス制度の導入について検討を
このほか、今回の増税で軽減税率制度が導入されることにより、2023年10月から『インボイス制度』が実施されることも押さえておきたいポイントです。
これは、税務署の登録を受けた課税事業者から発行された、取引の内容や取引ごとの税率を明確化した『適格請求書』のみ、仕入税額控除ができるという制度です。
免税事業者は『適格請求書』を発行できないため、免税事業者からの仕入れ等については、仕入税額控除を受けることができません。
現在は、取引している事業主が課税事業者でも免税事業者でも仕入税額控除できますので影響しませんが、この制度が実施されると、取引先としては仕入税額控除が可能な業者と優先的に取引したいと考えることは大いに考えられます。
『適格請求書』を発行するためには、課税事業者となり、税務署から事業所登録番号をもらう必要があります。
もし現在、免税事業者である場合は、インボイス制度を導入するかどうか、検討していくことも必要でしょう。
※本記事の記載内容は、2019年7月現在の法令・情報等に基づいています。
まず押さえておきたいのが、建設請負工事は完成引き渡し時の消費税が適用されるため、『引き渡し日』によって適用される税率が変わるという点です。
消費税の引き上げは10月1日に予定されているので、9月30日までに住宅等の引き渡しが完了していれば消費税は8%のままで、10月1日以降となれば10%が適用されることになります。
これに伴い、「増税前に家を建てたい、買いたい」という駆け込み需要が起こり、一時的な人手不足によって工期に間に合わない業者が出てくることも考えられます。
その結果、「増税までに引き渡しができなかったから」と顧客に対して10%の消費税を請求するわけにはいかず、請負業者側で差額の2%を負担するという事態が起きる可能性もあります。
そこで、『引き渡し日』が施行日前から施行日後に変更になるおそれがある場合、あらかじめ消費税率の引き上げに伴い発生する消費税の増額相当分の取り扱いについて、契約書に明記しておくなどの対策を取っておくことが望ましいといえます。
契約日が3月31日までなら8%が適用
ただし、建設工事は工期が長く、請負契約日から建築物の引き渡しまでに数カ月、時には年単位の時間がかかることもあるため、これを考慮した『経過措置』が取られています。
2019年3月31日までに請負契約を終えていれば、引き渡しが10月1日以降になったとしても8%の消費税が適用されるというものです。
注意したいのが、工事期間中に工事の内容が変わってしまったケースです。
たとえば、2019年3月31日までに請負契約を終えていても、4月1日以降に、最初締結した請負契約の内容とはまったく違う契約内容になることは珍しくありません。
この場合は『契約の変更』となり、経過措置は適用されず、原則として工事全体に対して消費税率10%が適用されます。
ただし、“塀を追加する”などの微細な工事の追加であれば、『契約の変更』ではなく『追加工事』で済むこともあります。
追加工事であれば、最初に締結していた工事の請負契約分は8%の消費税率が適用され、追加工事についてのみ10%が適用されます。
建材などの仕入れや外注工事への影響は?
さらに、仕入れに関することも押さえておく必要があります。
仕入れには大きく二つのパターンがあります。
一つが、建材などで売買契約を結んで購入すること。
そしてもう一つが、外注工事を依頼する形での仕入れです。
建材の売買契約においては、『引き渡しを受けた日』の税率が適用となると定められており、経過措置は設けられていません。
一方、外注工事の支払いについては、先述した経過措置が適用されます。
では、元請業者が請負契約を締結したのが2019年3月31日までだったとしても、元請業者と下請業者が請負契約を締結するのが4月1日以降になるときには、どのような措置を取ればよいのでしょうか。
原則として、このようなケースでは下請業者との下請契約には経過措置は適用されないため、下請契約については引き渡しが10月1日以降であれば消費税率10%が適用されることになります。
ただし、消費税は原則として元請契約の消費税額から下請契約の消費税額を控除した金額を納付するため、元請契約と下請契約で税率が変わったとしても、消費税が適正に転嫁されている限り損益に影響することはありません。
ですから、ここはあまり気にしなくてもよいところです。
建設業界においては、10%の消費税率が適用となるタイミングや経過措置を正しく理解するとともに、顧客との間でトラブルが起きないように必要な説明をしておくことが大切です。
インボイス制度の導入について検討を
このほか、今回の増税で軽減税率制度が導入されることにより、2023年10月から『インボイス制度』が実施されることも押さえておきたいポイントです。
これは、税務署の登録を受けた課税事業者から発行された、取引の内容や取引ごとの税率を明確化した『適格請求書』のみ、仕入税額控除ができるという制度です。
免税事業者は『適格請求書』を発行できないため、免税事業者からの仕入れ等については、仕入税額控除を受けることができません。
現在は、取引している事業主が課税事業者でも免税事業者でも仕入税額控除できますので影響しませんが、この制度が実施されると、取引先としては仕入税額控除が可能な業者と優先的に取引したいと考えることは大いに考えられます。
『適格請求書』を発行するためには、課税事業者となり、税務署から事業所登録番号をもらう必要があります。
もし現在、免税事業者である場合は、インボイス制度を導入するかどうか、検討していくことも必要でしょう。
※本記事の記載内容は、2019年7月現在の法令・情報等に基づいています。