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女性の活躍を積極的に後押しする『クオータ制』とは?

19.04.19
ビジネス【人的資源】
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“クオータ”とは、“割り当て”や“分配”という意味を持ち、北欧諸国でスタートした『クオータ制』は、政治において男女平等を実現するために、議員などの数の一定数を、あらかじめ女性に割り当てる制度のことをいいます。
女性の社会進出を後押しし、さらに、能力のある女性を積極的に登用することで、企業の活性化を図ることができるものとして注目されており、海外では法制化され、企業などで実施され始めている国もあります。
今回は、日本ではまだなじみの薄いこのクオータ制についてご紹介します。
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クオータ制の始まりと各国の現状

2018年6月、スイスの国民議会では、国内にある上場企業の執行役員会と取締役会に『クオータ制』を導入するという法案が可決されました。
スイスでは今後、従業員250人以上の上場企業は、取締役員の30%、執行役員の20%以上を女性にしなければいけません。
また、欧州委員会(EC)でも、2020年までに域内の上場企業の社外取締役の女性比率を40%にすることを目標にしています。

ヨーロッパでは近年、企業における役員の男女比率の偏りをなくすため、このクオータ制を法令化する国が増えつつあります。

そもそもの始まりは、1974年にノルウェーの国会が初めて『性別クオータ制(内部機関や選挙の候補者リストに一定割合以上の両性を含める)』を導入し、1978年には『男女平等法』を制定。
そこから徐々に、ヨーロッパ各国の政治の世界でもクオータ制が導入され、次いで民間企業にも広がっていきました。
この法令に違反した場合、たとえばノルウェーでは株式会社登録の取り消しや会社の解散などの厳しい罰則規定が設けられており、現在、ほとんどの上場企業がこの法令を遵守しています。


日本企業における女性の役員登用状況

このように各国がクオータ制を法令として定めはじめている一方で、なかなかそこまでは追いついていないのが日本の現状です。

総務省統計局による『労働力調査(詳細集計)』の平成30年(2018年)10~12月期平均(速報)結果では、役員を除く雇用者数が男性は3,032万人、女性は約2,616万人でした。
これが企業の役員となると、男女の割合はずいぶん変わってきます。

また東京商工リサーチの調査によると、2018年3月期決算の上場企業2,375社の役員総数は2万7,526人でしたが、そのうち、女性役員は1,049人と、役員全体のわずか3.8%にとどまりました。
前年度が3.3%だということを鑑みても、3.8%という数字はかなり低く、女性の役員が一人もいない企業は1,536社にも上りました。

現政権のとりまとめた『第4次男女共同参画基本計画』では、2020年までに社会のあらゆる分野において指導的地位に女性が占める割合を、少なくとも30%程度にすることを目標に掲げていますが、このままでは達成はむずかしそうです。

クオータ制のメリットは、能力のある女性を役員にし、企業の生産性を向上させることにあります。
日本の全人口は、現在約1億2,500万人。
そのうち、男性は約6,100万人、女性は約6,400万人です。
人口の半分以上を占める女性を経営に参加させず、男性だけが担うのであれば、企業的な発展はありえず、女性の持っている能力も最大限に発揮できていないことになります。
そのため、それぞれに適切な機会と立場を与えるべきであるというのが、クオータ制の基本的な考え方です。

もちろん日本企業において一定数の女性の役員登用には、出産によるキャリアの中断や、未だに根強く残る男女の待遇差や、公正な人事評価がなされないなどのさまざまな壁があるのも事実です。
女性側の意識としても、『管理職にはなりたくない』と考えている人も少なくありません。
法令としてクオータ制が施行され、各企業が準じていくのは、日本においてはまだまだ先になりそうです。
しかし、法令化を待つばかりではなく、各企業がやれることもあるはずです。
実際に、女性の役員登用を積極的に行っている日本企業の例を見ていきましょう。


女性の活躍に期待している企業とは?

これからは社内の環境を整備し、女性にとって働きやすい職場をつくり、女性の役員登用を積極的に行う企業が成長していくといわれています。

化粧品の製造開発を行っているシーボンの女性役員比率は60%と、他企業を圧倒しています。
さらに、女性の管理職比率は85%を超えており、女性が働きやすい会社であることがわかります。
さらに、出産、育児、介護などの理由で退社してしまった社員でも再入社できる『ウェルカムバック制度』や、同じように育児や介護など、さまざまな制約によって通常の就業がむずかしくなった社員のために、1日8時間未満の勤務形態でも正社員として働ける『ショートタイム正社員』などの制度が充実していることも特徴です。

また、百貨店の高島屋は、2018年末時点で、正社員の6割が女性。
女性管理職の比率は3割に達しており、役員待遇は執行役員を含め17.7%が女性です。
今後も管理職候補を育成する研修を充実させる取り組みを進めており、男女問わず、役員登用の可能性がある企業といえそうです。


このように、大企業、中小企業問わず、女性の役員登用を進めている企業は徐々に増えつつあります。
女性ならではの目線、考え方、才能を経営に取り入れてこそ、より長期的な発展、成長が見込めるはずです。
自社の役員の男女比率に関して、今一度、見つめ直してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2019年4月現在の法令・情報等に基づいています。