高度専門職は、最長10年間『無期転換申込権』が発生しない!?
【相談内容】
2年前、高度な専門知識を有するシステムエンジニアを雇用。
2年ごとに契約を更新する有期労働契約を締結しました。
当初、この従業員は『プロジェクトA(6年間を予定)』に従事していましたが、3年目から『プロジェクトB(8年間を予定)』へ異動する予定です。
“高度専門職は最長10年間無期転換申込権が発生しない”と聞きましたが、プロジェクトを異動した場合の勤務年数は、どのように算定するのでしょうか?
2年前、高度な専門知識を有するシステムエンジニアを雇用。
2年ごとに契約を更新する有期労働契約を締結しました。
当初、この従業員は『プロジェクトA(6年間を予定)』に従事していましたが、3年目から『プロジェクトB(8年間を予定)』へ異動する予定です。
“高度専門職は最長10年間無期転換申込権が発生しない”と聞きましたが、プロジェクトを異動した場合の勤務年数は、どのように算定するのでしょうか?
【結論】
5年以上のプロジェクトに従事する場合、そのプロジェクトが完了するまでは無期転換申込権が発生しません。
ただし、無期転換申込権が発生しないのは“最初に有期雇用契約を締結した時点から、期間が長い方のプロジェクトが終了するまで”です。
つまり、当該従業員の場合、“雇入れ時から8年間”が無期転換申込権が発生しない期間となります。
無期転換ルールの特例とは?
2013年4月1日以降に開始した有期労働契約を対象に、通算5年を超えて有期労働契約が反復更新された場合、労働者には無期労働契約を申し込む権利が発生します(労働契約法18条)。
ただし、以下の要件をすべて満たす場合は、そのプロジェクトが終了するまで無期転換申込権が発生しません(専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法)。
(1)適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた事業主に雇用されていること
(2)有期労働契約を締結した事業主から支払われると確実に見込まれる賃金が年間1,075万円以上であること
(3)医師、弁護士、公認会計士、特許発明の発明者、5年以上の実務経験を有する(※1)建築士やシステムエンジニアなど、高度な専門的知識などを有していること
(4)5年を超える高度な専門的知識を必要とするプロジェクト(※2)に従事すること
仮に上記条件をすべて満たした従業員が7年のプロジェクトに従事した場合、そのプロジェクトが完了するまでの7年間は無期転換申込権が発生しません。
ただし、無期転換申込権が発生しない期間の上限は“10年”です。
プロジェクトが10年を超える場合は、期間の途中であっても“10年が経過した時点で”無期転換申込権が発生します。
雇入れ時からの
通算契約期間がカギ!
前述の通り、高度専門職の場合、プロジェクトに従事している期間中は、そのプロジェクトが完了するまで無期転換申込権が発生しません。
ただしそれは、プロジェクト開始日~完了までの期間が“最初の有期労働契約からの通算契約期間を超えない場合”に限られます。
つまり、無期転換申込権が発生しない期間は“雇入れ時からの通算契約期間”となるのです。
そのため、本ケースの場合、無期転換申込権が発生しないのは“雇入れ時から8年間”となります。
<プロジェクトの途中で、別のプロジェクトに従事する場合>
では仮に、プロジェクト『A』完了後にプロジェクト『B』に従事していた場合、無期転換申込権はいつ発生するのでしょうか?
その場合も、プロジェクト『A』に従事している期間は6年間を、プロジェクト『B』に従事している期間は8年間をそれぞれ超えない限り、無期転換申込権は発生しません。
ただし、前述の通り、雇入れ時から起算するため、“最初の有期労働契約を締結した日から8年間”が無期転換申込権が発生しない期間となります。
<プロジェクト完了後、引き続き別のプロジェクトに従事する場合>
特例の要件から外れると
無期転換申込権が発生!
なお、以下のいずれかに該当し、雇入れ時からの通算契約期間が5年を超えている場合は、その時点で無期転換申込権が発生します。
・プロジェクトに従事しなくなった場合
・年収要件(1,075万円)を満たさなくなった場合
・都道府県労働局長による計画の認定が取り消された場合
無期転換ルールは、労働者の雇用の安定を図ることを目的としています。
そのため、無期転換申込権を有する従業員から無期労働契約の申込みがあった場合は、会社が拒否することはできません。
また、有期労働契約の締結・更新の際には、無期転換ルールに関する特例が適用されていることや労働条件を対象労働者に明示する必要があるので、注意しましょう。
※1 大学を卒業している場合。短期大学・高等専門学校卒業の場合は6年、高等学校卒業の場合は7年以上の実務経験。
※2 一定の期間内に完了する業務(特定有期業務)。毎年度行われる業務など、恒常的に継続する業務は除きます。
現場に身近な労働法 Q&A
5年以上のプロジェクトに従事する場合、そのプロジェクトが完了するまでは無期転換申込権が発生しません。
ただし、無期転換申込権が発生しないのは“最初に有期雇用契約を締結した時点から、期間が長い方のプロジェクトが終了するまで”です。
つまり、当該従業員の場合、“雇入れ時から8年間”が無期転換申込権が発生しない期間となります。
無期転換ルールの特例とは?
2013年4月1日以降に開始した有期労働契約を対象に、通算5年を超えて有期労働契約が反復更新された場合、労働者には無期労働契約を申し込む権利が発生します(労働契約法18条)。
ただし、以下の要件をすべて満たす場合は、そのプロジェクトが終了するまで無期転換申込権が発生しません(専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法)。
(1)適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた事業主に雇用されていること
(2)有期労働契約を締結した事業主から支払われると確実に見込まれる賃金が年間1,075万円以上であること
(3)医師、弁護士、公認会計士、特許発明の発明者、5年以上の実務経験を有する(※1)建築士やシステムエンジニアなど、高度な専門的知識などを有していること
(4)5年を超える高度な専門的知識を必要とするプロジェクト(※2)に従事すること
仮に上記条件をすべて満たした従業員が7年のプロジェクトに従事した場合、そのプロジェクトが完了するまでの7年間は無期転換申込権が発生しません。
ただし、無期転換申込権が発生しない期間の上限は“10年”です。
プロジェクトが10年を超える場合は、期間の途中であっても“10年が経過した時点で”無期転換申込権が発生します。
雇入れ時からの
通算契約期間がカギ!
前述の通り、高度専門職の場合、プロジェクトに従事している期間中は、そのプロジェクトが完了するまで無期転換申込権が発生しません。
ただしそれは、プロジェクト開始日~完了までの期間が“最初の有期労働契約からの通算契約期間を超えない場合”に限られます。
つまり、無期転換申込権が発生しない期間は“雇入れ時からの通算契約期間”となるのです。
そのため、本ケースの場合、無期転換申込権が発生しないのは“雇入れ時から8年間”となります。
<プロジェクトの途中で、別のプロジェクトに従事する場合>
では仮に、プロジェクト『A』完了後にプロジェクト『B』に従事していた場合、無期転換申込権はいつ発生するのでしょうか?
その場合も、プロジェクト『A』に従事している期間は6年間を、プロジェクト『B』に従事している期間は8年間をそれぞれ超えない限り、無期転換申込権は発生しません。
ただし、前述の通り、雇入れ時から起算するため、“最初の有期労働契約を締結した日から8年間”が無期転換申込権が発生しない期間となります。
<プロジェクト完了後、引き続き別のプロジェクトに従事する場合>
特例の要件から外れると
無期転換申込権が発生!
なお、以下のいずれかに該当し、雇入れ時からの通算契約期間が5年を超えている場合は、その時点で無期転換申込権が発生します。
・プロジェクトに従事しなくなった場合
・年収要件(1,075万円)を満たさなくなった場合
・都道府県労働局長による計画の認定が取り消された場合
無期転換ルールは、労働者の雇用の安定を図ることを目的としています。
そのため、無期転換申込権を有する従業員から無期労働契約の申込みがあった場合は、会社が拒否することはできません。
また、有期労働契約の締結・更新の際には、無期転換ルールに関する特例が適用されていることや労働条件を対象労働者に明示する必要があるので、注意しましょう。
※1 大学を卒業している場合。短期大学・高等専門学校卒業の場合は6年、高等学校卒業の場合は7年以上の実務経験。
※2 一定の期間内に完了する業務(特定有期業務)。毎年度行われる業務など、恒常的に継続する業務は除きます。
現場に身近な労働法 Q&A