プロスポーツから学ぶ、組織の“マンネリ化”を防ぐ極意とは
スポーツでも企業でも、組織が停滞する理由のひとつに“マンネリ化”があります。
スポーツならチームの、組織なら部や課の顔ぶれが変わらず、業務内容にも大きな変化がなければ、自身の業務内容や裁量の大きさが決まってきてしまいます。
企業が人事異動を定例化するのは、こうしたマンネリ化を防ぐ狙いがあるのでしょう。
今回は、サッカーJ1リーグの湘南ベルマーレを例に“マンネリ化を防ぐ秘訣”について考えていきましょう。
スポーツならチームの、組織なら部や課の顔ぶれが変わらず、業務内容にも大きな変化がなければ、自身の業務内容や裁量の大きさが決まってきてしまいます。
企業が人事異動を定例化するのは、こうしたマンネリ化を防ぐ狙いがあるのでしょう。
今回は、サッカーJ1リーグの湘南ベルマーレを例に“マンネリ化を防ぐ秘訣”について考えていきましょう。
チームの人員配置を継続するメリットとは?
仮に、サッカークラブが“継続性”を重視すると、以下のようなメリットがあります。
(1) 監督や選手、スタッフの入れ替わりがなく、継続性が保たれた組織であれば、目標・課題・問題意識などを共有しやすくなります。
試合中に“阿吽の呼吸”でお互いの意図を読み取れるようにもなるでしょう。
(2) 一人ひとりの能力を選手同士が理解し、コンビネーションができあがっているため、戦い方が安定し、成績が大きく崩れることはないでしょう。
しかし、サッカーチームは選手の入れ替わりが激しいスポーツです。
日本のJリーグは1チームあたり30人前後で構成されていますが、1シーズンごとに少なくとも5人の選手が入れ替わります。
多いときには、全体の半数近くが入れ替わることもあるのです。
選手の顔ぶれが変われば、レギュラーポジションを巡って新たな競争が生まれます。
組織に新鮮な空気が吹き込まれることで、マンネリ化を防ぐことができるのです。
ただし、先ほど説明した“継続性のメリット”も大切にしなければなりません。
では、選手が入れ替わっても組織としての継続性を失わず、なおかつマンネリ化も防ぐには、どうしたらよいのでしょうか?
土台があれば、組織は目ざす方向を失わない
マンネリ化を防ぎ、継続性も失わないためには、チームの“土台”が重要になってきます。
グラウンドでプレーする選手が変わっても、同じサッカーを表現できる土台を作り上げることが大切なのです。
この点で優れているのが、“湘南ベルマーレ”です。
チームを率いる曺貴裁(チョウ キジェ)監督の下、独自のサッカースタイルを作り上げ、シーズンを重ねるごとにチームを進化させています。
曺貴裁監督は、“浦和レッズ”などで選手として活躍後、ドイツのケルン体育大学でサッカーを学び、“川崎フロンターレ”や“セレッソ大阪”などでコーチを務めた後、2012年から“湘南ベルマーレ”の監督を務めています。
チームの土台について、曺貴裁監督は以下のように述べています。
「それまで積み上げてきたものが選手の能力によって培われたものだとしたら、選手が入れ替わってしまうと継続性がなくなる。けれども、チームの土台がしっかりあるチームならば、新しく入ってきた選手はそれを学ぼうとするし、すでにいた選手ともつながって、新しい良さが生まれる。選手が入れ替わったからサッカーが変わるとしたら、個人に依存したスタイルだったということ。
我々のチームはそうではないし、そういうものを目指してもいません」
ここでいう土台とは、組織としての“哲学”に置き換えてもいいでしょう。
“何のために”このチームに集まり、“何を目指して”サッカーをするのかを明確に打ち出すことが重要なのです。
そのうえで、曺貴裁監督は自らが“マンネリ化”していないかを日々考えているといいます。
「監督から選手に出せるものがなければ、選手の成長の手助けはできません。自分の中の引き出しがなくて以前と同じことしかできないなと思ったら、僕は監督を引き受けません」
組織のマンネリ化を防ぐのは、突き詰めて考えればリーダー自身がマンネリにならないことが大切だといえるでしょう。
参考文献:『低予算でもなぜ強い? 湘南ベルマーレと日本サッカーの現在地』(光文社新書、戸塚啓著)
企業成長のための人的資源熟考
●プロフィール●
戸塚 啓(とつか・けい)
1968年、神奈川県生まれ。法政大学法学部法律学科卒業後、雑誌編集者を経てフリーのスポーツライターに。新聞、雑誌などへの執筆のほか、CS放送で欧州サッカーの解説なども。主な著書に『不動の絆』(角川書店)、『僕らは強くなりたい~震災の中のセンバツ』(幻冬舎)。
仮に、サッカークラブが“継続性”を重視すると、以下のようなメリットがあります。
(1) 監督や選手、スタッフの入れ替わりがなく、継続性が保たれた組織であれば、目標・課題・問題意識などを共有しやすくなります。
試合中に“阿吽の呼吸”でお互いの意図を読み取れるようにもなるでしょう。
(2) 一人ひとりの能力を選手同士が理解し、コンビネーションができあがっているため、戦い方が安定し、成績が大きく崩れることはないでしょう。
しかし、サッカーチームは選手の入れ替わりが激しいスポーツです。
日本のJリーグは1チームあたり30人前後で構成されていますが、1シーズンごとに少なくとも5人の選手が入れ替わります。
多いときには、全体の半数近くが入れ替わることもあるのです。
選手の顔ぶれが変われば、レギュラーポジションを巡って新たな競争が生まれます。
組織に新鮮な空気が吹き込まれることで、マンネリ化を防ぐことができるのです。
ただし、先ほど説明した“継続性のメリット”も大切にしなければなりません。
では、選手が入れ替わっても組織としての継続性を失わず、なおかつマンネリ化も防ぐには、どうしたらよいのでしょうか?
土台があれば、組織は目ざす方向を失わない
マンネリ化を防ぎ、継続性も失わないためには、チームの“土台”が重要になってきます。
グラウンドでプレーする選手が変わっても、同じサッカーを表現できる土台を作り上げることが大切なのです。
この点で優れているのが、“湘南ベルマーレ”です。
チームを率いる曺貴裁(チョウ キジェ)監督の下、独自のサッカースタイルを作り上げ、シーズンを重ねるごとにチームを進化させています。
曺貴裁監督は、“浦和レッズ”などで選手として活躍後、ドイツのケルン体育大学でサッカーを学び、“川崎フロンターレ”や“セレッソ大阪”などでコーチを務めた後、2012年から“湘南ベルマーレ”の監督を務めています。
チームの土台について、曺貴裁監督は以下のように述べています。
「それまで積み上げてきたものが選手の能力によって培われたものだとしたら、選手が入れ替わってしまうと継続性がなくなる。けれども、チームの土台がしっかりあるチームならば、新しく入ってきた選手はそれを学ぼうとするし、すでにいた選手ともつながって、新しい良さが生まれる。選手が入れ替わったからサッカーが変わるとしたら、個人に依存したスタイルだったということ。
我々のチームはそうではないし、そういうものを目指してもいません」
ここでいう土台とは、組織としての“哲学”に置き換えてもいいでしょう。
“何のために”このチームに集まり、“何を目指して”サッカーをするのかを明確に打ち出すことが重要なのです。
そのうえで、曺貴裁監督は自らが“マンネリ化”していないかを日々考えているといいます。
「監督から選手に出せるものがなければ、選手の成長の手助けはできません。自分の中の引き出しがなくて以前と同じことしかできないなと思ったら、僕は監督を引き受けません」
組織のマンネリ化を防ぐのは、突き詰めて考えればリーダー自身がマンネリにならないことが大切だといえるでしょう。
参考文献:『低予算でもなぜ強い? 湘南ベルマーレと日本サッカーの現在地』(光文社新書、戸塚啓著)
企業成長のための人的資源熟考
●プロフィール●
戸塚 啓(とつか・けい)
1968年、神奈川県生まれ。法政大学法学部法律学科卒業後、雑誌編集者を経てフリーのスポーツライターに。新聞、雑誌などへの執筆のほか、CS放送で欧州サッカーの解説なども。主な著書に『不動の絆』(角川書店)、『僕らは強くなりたい~震災の中のセンバツ』(幻冬舎)。