広告ビジネス界における世界最高峰の国際賞“カンヌライオンズ”2017の受賞作品から②
前回から、世界最高峰の国際賞“カンヌライオンズ”の2017年話題作についてご紹介しています。
今回も引き続き、4冠を獲得した『Fearless Girl』(恐れを知らぬ少女)を紐解いていきましょう。
まずは、“SHE”という株式ファンドの広告コミュニケーションとして、少女の像を設置することが、何故こんなにも評価されたのでしょうか?
今回も引き続き、4冠を獲得した『Fearless Girl』(恐れを知らぬ少女)を紐解いていきましょう。
まずは、“SHE”という株式ファンドの広告コミュニケーションとして、少女の像を設置することが、何故こんなにも評価されたのでしょうか?
『Fearless Girl』が評価された理由
評価された特徴を、私は“起点創造クリエイティブ”と呼んでいます。
どういうものか、3つのポイントを挙げて説明していきます。
①“発信”するのではなく、人々の行動の“きっかけ”=“起点”を創造する
まず送り手がすべきことは、“発信”ではありません。
ここ数年流行しているWeb動画は、人々に拡散されてパワーを持つという点では新しいのですが、“発信者→受信者”という構造については従来の伝統的広告と変わっていません。
ところが、この受賞作は“発信者→受信者”という構造ではなく、あくまでも行ったことは“起点”を創造したこと、人々が動くための“ネタ”を提供したことなのです。
②メディアの主体はピープル、“人々の行動”をメディア化する
昨今の広告コミュニケーションには、PR的要素が欠かせず、いかにしてマスメディアに取り上げられるかが大きな課題になっています。
『Fearless Girl』はマスメディアにも取り上げられていますが、あくまでメッセージを拡散させた中心は、少女像と一緒に写真を撮ってSNSに投稿した“人々の行動”なのです。
これは、“人々の行動自体をメディア化した”といえるでしょう。
③Story TellingからStory Evokingへ
長らく欧米を中心に、ブランドによるStory Tellingの重要性が唱えられてきました。
しかし『Fearless Girl』において『リーダーシップにおける女性のパワーを知ろう!』という“SHE”が訴えるStoryを語るのは、ブランドではなく、消費者(人々)です。
人々は、ブランドが語るストーリーを聞くよりも、自身でストーリーを語りたがっています。
そこで、Story Evoking(ストーリー・イヴォーキング=ストーリー喚起)と呼ぶべき施策として、ブランドは人々がストーリーを語るきっかけ(起点)を創り出せばいいのです。
“起点創造クリエイティブ”を活用した広告
2017年の話題作のうち、これら3つの特徴を持つものとして『Cheetos Museum』(PR、Cyber、Promo & Activationのゴールド他受賞)をご紹介します。
チートスとは、日本でもおなじみのコーンスナックのことです。
製法の関係上、一つとして同じ形がないといわれています。
そこで、フリトレー社が創造した“起点”は、“リンカーンに似ているチートス”や、“タツノオトシゴに似ているチートス”などを消費者が投稿して展示する、オンライン上の“チートス・ミュージアム”です。
投稿した“何かに似ているチートス”の写真が掲載され、週間ベストに選ばれると5,000ドル(50万円強)がもらえるというキャンペーンを10週間実施しました。
人々はこの“何かに似ているチートス探し”に熱狂し、127,717もの投稿がありました。
さらにフリトレー社は、ニューヨークのグランドセントラル駅に本物のミュージアムを作って展示を行いました。
そのうち、人々はオークション・サイトで“何かに似たチートス”の売り買いを始め、“空を飛んでいるスーパーマンに似たチートス”は、約50万円で落札されました。
この間、チートスの売上も週間ベースで過去最高を記録したといいます。
次回:広告ビジネス界における世界最高峰の国際賞“カンヌライオンズ”2017の受賞作から③
佐藤達郎のマーケティング論
●プロフィール●
佐藤達郎(さとう・たつろう)
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。
評価された特徴を、私は“起点創造クリエイティブ”と呼んでいます。
どういうものか、3つのポイントを挙げて説明していきます。
①“発信”するのではなく、人々の行動の“きっかけ”=“起点”を創造する
まず送り手がすべきことは、“発信”ではありません。
ここ数年流行しているWeb動画は、人々に拡散されてパワーを持つという点では新しいのですが、“発信者→受信者”という構造については従来の伝統的広告と変わっていません。
ところが、この受賞作は“発信者→受信者”という構造ではなく、あくまでも行ったことは“起点”を創造したこと、人々が動くための“ネタ”を提供したことなのです。
②メディアの主体はピープル、“人々の行動”をメディア化する
昨今の広告コミュニケーションには、PR的要素が欠かせず、いかにしてマスメディアに取り上げられるかが大きな課題になっています。
『Fearless Girl』はマスメディアにも取り上げられていますが、あくまでメッセージを拡散させた中心は、少女像と一緒に写真を撮ってSNSに投稿した“人々の行動”なのです。
これは、“人々の行動自体をメディア化した”といえるでしょう。
③Story TellingからStory Evokingへ
長らく欧米を中心に、ブランドによるStory Tellingの重要性が唱えられてきました。
しかし『Fearless Girl』において『リーダーシップにおける女性のパワーを知ろう!』という“SHE”が訴えるStoryを語るのは、ブランドではなく、消費者(人々)です。
人々は、ブランドが語るストーリーを聞くよりも、自身でストーリーを語りたがっています。
そこで、Story Evoking(ストーリー・イヴォーキング=ストーリー喚起)と呼ぶべき施策として、ブランドは人々がストーリーを語るきっかけ(起点)を創り出せばいいのです。
“起点創造クリエイティブ”を活用した広告
2017年の話題作のうち、これら3つの特徴を持つものとして『Cheetos Museum』(PR、Cyber、Promo & Activationのゴールド他受賞)をご紹介します。
チートスとは、日本でもおなじみのコーンスナックのことです。
製法の関係上、一つとして同じ形がないといわれています。
そこで、フリトレー社が創造した“起点”は、“リンカーンに似ているチートス”や、“タツノオトシゴに似ているチートス”などを消費者が投稿して展示する、オンライン上の“チートス・ミュージアム”です。
投稿した“何かに似ているチートス”の写真が掲載され、週間ベストに選ばれると5,000ドル(50万円強)がもらえるというキャンペーンを10週間実施しました。
人々はこの“何かに似ているチートス探し”に熱狂し、127,717もの投稿がありました。
さらにフリトレー社は、ニューヨークのグランドセントラル駅に本物のミュージアムを作って展示を行いました。
そのうち、人々はオークション・サイトで“何かに似たチートス”の売り買いを始め、“空を飛んでいるスーパーマンに似たチートス”は、約50万円で落札されました。
この間、チートスの売上も週間ベースで過去最高を記録したといいます。
次回:広告ビジネス界における世界最高峰の国際賞“カンヌライオンズ”2017の受賞作から③
佐藤達郎のマーケティング論
●プロフィール●
佐藤達郎(さとう・たつろう)
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。