「プレイング・マネージャー」制度による「諦め感」を克服するには
現代の「プレイング・マネージャー」とは、どんなイメージがあるでしょう。
「管理職とは名ばかり」「仕事内容は一般社員と同じか、それ以上のボリュームを課せられる」「給料はさほど増えないのに、責任だけ重くのしかかる」というように、諦め感に満ちた言葉が並びます。
こうした停滞感は、会社にとって望ましいことではありません。「プレイング・マネージャー」による諦め感を克服することが、企業活性化における課題とも言えるでしょう。
「管理職とは名ばかり」「仕事内容は一般社員と同じか、それ以上のボリュームを課せられる」「給料はさほど増えないのに、責任だけ重くのしかかる」というように、諦め感に満ちた言葉が並びます。
こうした停滞感は、会社にとって望ましいことではありません。「プレイング・マネージャー」による諦め感を克服することが、企業活性化における課題とも言えるでしょう。
■膨大な業務量に管理職の仕事が付加される
「プレイング・マネージャー」というのは、社員の仕事に管理職の仕事を付加することです。通常の業務にリーダーの役割が重なり、責務は厳しくなります。
経営学者のH.ミンツバーグ教授は、マネージャーの機能として10個の目標を挙げています。
「プレイング・マネージャー」というのは、社員の仕事に管理職の仕事を付加することです。通常の業務にリーダーの役割が重なり、責務は厳しくなります。
経営学者のH.ミンツバーグ教授は、マネージャーの機能として10個の目標を挙げています。
それは「象徴」「リーダー」「ネットワーク構築」「モニター」「周知伝達」「スポークスマン」「企業家」「障害処理」「資源配分」「交渉」です。
これら管理職の仕事が付加されるからといって、通常業務が軽減されるかというと、そうではないケースが多いです。むしろ、一般社員よりも多い業務量に管理職の仕事がオンされるパターンが少なくないでしょう。
産業能率大学による「上場企業の課長に関する実態調査」(2013年6月)によると、課長の99.2%がプレイヤーとしての役割を兼務しています。なおかつ「プレイヤーとしての役割が51%以上(過半数)」と回答した人が48.2%を占めています。
プレイヤーとしての業務を主体とする一方、マネージャーの役割も行うという「プレイング・マネージャー」が多いようです。
■職務給の導入で実質「上がり」の「プレイング・マネージャー」が増加
現在、どの会社でも組織の再構築を進めています。それにより、判断業務を主体とする、部長クラスの「純粋な管理職」になれるのは、ほんの一握りになっています。
社内の管理職は「少数の上級管理職」と「多くのプレイング・マネージャー」という体制になり、「プレイング・マネージャー」のポストが、実質的に「上がり」になってしまうケースが多くなります。
現在は、勤続年数に応じて賃金が上昇する「職能給」よりも、実際の職務や役割に応じて賃金が決まる「職務給(役割給)」を導入している企業が増えています。
日本生産性本部「第14回日本的雇用・人事の変容に関する調査」によると、管理職の賃金制度に関して「職務給(役割給)」を導入している企業の割合は1999年の21%から2013年は76%と約3.6倍の増加となっています。
業務量が膨大にもかかわらず、ポストや役割が上がらない限り、給与が頭打ちになり、モチベーションが上がらない。
そんな「プレイング・マネージャー」の現状から、諦め感が生まれているのではないのでしょうか。
■まとめ:「管理職」「専門職」それぞれのキャリア像を提示
「プレイング・マネージャー」制度による、現場の停滞感を打ち砕くには、何が必要なのでしょう。
多くの企業が採用しているのが「複線型人事」です。マネジメントを通じて会社に貢献する管理職コースと、業務の専門性を通じて会社に貢献する専門職コースに区分して、人材を有効活用し、社員のモチベーションを上げるのが狙いです。
それには会社が理想とする管理職と専門職のキャリア像をそれぞれ具体的に提示し、社員の目指したいキャリアと重なるように導くことが大事です。
そうすることで、「プレイング・マネージャー」が生き生きと業務にあたれるようになり、停滞感の克服につながるのです。
企業成長のための人的資源熟考
●プロフィール●
佐野陽子 さの・ようこ
慶應義塾大学名誉教授。1972年慶應義塾大学商学部教授。87年から2年間、日本労務学会代表理事。89年から2年間、慶應義塾大学商学部長・大学院商学研究科委員長。96年東京国際大学商学部教授。2001年から4年間、嘉悦大学学長・経営経済学部教授。主な著書:『はじめての人的資源マネジメント』『企業内労働市場』(ともに有斐閣)。
これら管理職の仕事が付加されるからといって、通常業務が軽減されるかというと、そうではないケースが多いです。むしろ、一般社員よりも多い業務量に管理職の仕事がオンされるパターンが少なくないでしょう。
産業能率大学による「上場企業の課長に関する実態調査」(2013年6月)によると、課長の99.2%がプレイヤーとしての役割を兼務しています。なおかつ「プレイヤーとしての役割が51%以上(過半数)」と回答した人が48.2%を占めています。
プレイヤーとしての業務を主体とする一方、マネージャーの役割も行うという「プレイング・マネージャー」が多いようです。
■職務給の導入で実質「上がり」の「プレイング・マネージャー」が増加
現在、どの会社でも組織の再構築を進めています。それにより、判断業務を主体とする、部長クラスの「純粋な管理職」になれるのは、ほんの一握りになっています。
社内の管理職は「少数の上級管理職」と「多くのプレイング・マネージャー」という体制になり、「プレイング・マネージャー」のポストが、実質的に「上がり」になってしまうケースが多くなります。
現在は、勤続年数に応じて賃金が上昇する「職能給」よりも、実際の職務や役割に応じて賃金が決まる「職務給(役割給)」を導入している企業が増えています。
日本生産性本部「第14回日本的雇用・人事の変容に関する調査」によると、管理職の賃金制度に関して「職務給(役割給)」を導入している企業の割合は1999年の21%から2013年は76%と約3.6倍の増加となっています。
業務量が膨大にもかかわらず、ポストや役割が上がらない限り、給与が頭打ちになり、モチベーションが上がらない。
そんな「プレイング・マネージャー」の現状から、諦め感が生まれているのではないのでしょうか。
■まとめ:「管理職」「専門職」それぞれのキャリア像を提示
「プレイング・マネージャー」制度による、現場の停滞感を打ち砕くには、何が必要なのでしょう。
多くの企業が採用しているのが「複線型人事」です。マネジメントを通じて会社に貢献する管理職コースと、業務の専門性を通じて会社に貢献する専門職コースに区分して、人材を有効活用し、社員のモチベーションを上げるのが狙いです。
それには会社が理想とする管理職と専門職のキャリア像をそれぞれ具体的に提示し、社員の目指したいキャリアと重なるように導くことが大事です。
そうすることで、「プレイング・マネージャー」が生き生きと業務にあたれるようになり、停滞感の克服につながるのです。
企業成長のための人的資源熟考
●プロフィール●
佐野陽子 さの・ようこ
慶應義塾大学名誉教授。1972年慶應義塾大学商学部教授。87年から2年間、日本労務学会代表理事。89年から2年間、慶應義塾大学商学部長・大学院商学研究科委員長。96年東京国際大学商学部教授。2001年から4年間、嘉悦大学学長・経営経済学部教授。主な著書:『はじめての人的資源マネジメント』『企業内労働市場』(ともに有斐閣)。