広告のよしあしを決めるのは「コンセプト」!そのワケ…?その1
今回はこのコンセプトについて、もう少し詳しくお話していこうと思います。
広告業界のアイディア・ミーティングでは、このコンセプトという言葉が、頻繁に聞かれます。
多くの人は、「アイディア・ミーティング」と聞くと、“これ、面白いストーリーでしょ?”“こうすれば迫力のあるビジュアルになりますよ”といった会話ばかりが繰り広げられていると思われるようですが、実際は、もっとずっと理屈っぽい会話が交わされています。
その理屈の中心を担うのが、「コンセプト」。コンセプトは、その広告で「何をどう伝えるか」の核心をなす考え方のことです。
■「コンセプト」ありきのCM例
例えば、皆さんもよくご存知、白い犬のお父さんが登場するソフトバンクのテレビCM。
あの広告も、単に“白い犬がお父さんになったら面白くないですか?”というやり取りではなく、コンセプトがあって生まれたものでしょう。白い犬登場以前の一連の流れを見てみると、コンセプトは「予想外」だと思われます。予想外の割引というサービスの商品性を元にして、その商品性を伝えるために、テレビCMの表現も“予想外の展開・予想外のキャスティング(配役)をしよう”というのが発想の素となったと言えるでしょう。
また、ガムのテレビCM(ロッテのフィッツ)で、なんだかフニャフニャした動きのダンスをしている広告を見たことはないでしょうか?
このテレビCMのコンセプトは、“今までのガムにはない柔らかい(フニャフニャとした)噛み心地”だと考えられます。その商品性を、奇妙な動きのダンスで表現したわけです。いきなり、“なんかさ、妙な、フニャフニャしたダンスやりたいよね”“そうだ、そうだ、それ、いいね!”というようなことではないと思います。
■コンセプトとは
コンセプトとは、いわば「大方針」のようなものです。大方針によって、アイディアの良い・悪いは変わって来ます。
「予想外」というコンセプトがなければ、白い犬のお父さんというアイディアは生まれなかったし、選ばれなかったでしょう。「今までのガムにはない柔らかい噛み心地」というコンセプトがなければ、フニャフニャした妙なダンスの案も生まれなかったし選ばれなかったでしょう。
表現のアイディアにしろビジネスのアイディアにしろ、多くの人は“アイディアの翼を羽ばたかせるためには、あらゆる制約を取っ払って…”と考えがちです。
しかし、何を考えてもいいとなると、的が絞れず適切なアイディアは却って生まれにくくなります。ある種の制約(ここではコンセプトがその制約に当たります)は、有効なアイディアを生み出すために欠かせないものでもあるわけです。
もちろん、この手の制約が本当にアイディアを縮こまらせてしまうこともあるでしょう。だからコンセプトに関しても、大方針ではあるものの、硬直的に考えずフレキシブルに見る必要があります。
■まとめ
いずれにしろ、皆さんのビジネスにおいても、つねにコンセプト(大方針)を意識して言葉にし、そのコンセプトに沿う形で、魅力的な企画の開発・選択・決定・実施を心がけるべきではないかと思うのです。
次回はコンセプトに対してもう少し具体的な話に踏み込む予定です。
次回: 広告のよしあしを決めるのは「コンセプト」!そのわけは…?その2
佐藤達郎の今すぐ使える!マーケティング手法
●プロフィール●
佐藤達郎 さとうたつろう
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。