遅刻・早退者に対し、年次有給休暇の出勤率をカットできる?
<ご質問>
年次有給休暇付与に必要な8割の出勤率について、遅刻や早退によって、出勤率を低減させることはできるのでしょうか。たとえば、所定労働時間が8時間の事業所で2時間遅刻したら出勤率も25%減としたり、それが難しければ「減給の制裁」規定に照らして、遅刻3回で1日の欠勤としたりすることは可能でしょうか?
【静岡・H社】
年次有給休暇付与に必要な8割の出勤率について、遅刻や早退によって、出勤率を低減させることはできるのでしょうか。たとえば、所定労働時間が8時間の事業所で2時間遅刻したら出勤率も25%減としたり、それが難しければ「減給の制裁」規定に照らして、遅刻3回で1日の欠勤としたりすることは可能でしょうか?
【静岡・H社】
<回答>
出勤率は「労働日単位」でみる。一部就労しての欠勤扱いは不可
出勤率は、全労働日のうち何日出勤したかで決まります(労働基準法39条)。「労働者の勤怠の状況を勘案して、特に出勤率の低いものを除外する立法趣旨」です(昭和33・2・13揮発90号)。全労働日の日数は就業規則その他によって定められた所定休日を除いた日をいい、職種により異なることもあり得るでしょう。
出勤率の計算における「出勤日」とみなされる期間について、
(1)業務上傷病にかかり療養のため休業した期間
(2)育児休業・介護休業をした期間
(3)産前産後の休業期間
は、出勤したものとして処理します(労働基準法39条8項)。これ以外について規定はありません。
「裁判員に選ばれた」といった、正当な手続きにより労働義務を免除されているときの不就業という事実は、必ずしも勤務成績不良という評価を受ける性質のものではなく、8割出勤の計算に当たり欠勤と同様に取り扱うことは妥当ではないとされています。
「遅刻3回で欠勤1日」と処理しているようなケースではどうでしょうか。
1回の遅刻についての減給の限度は、平均賃金の半日分です。そこで遅刻3回ならば、理屈としては0.5日分×3回で1.5日分の賃金カットができます。1.5日分が上限ですから、ご質問のように遅刻3回で1日の欠勤とみなしてカットすることも労働基準法上は可能ということになります。
しかし、これはあくまでも「賃金計算上」の話です。出勤率を計算する際の労働日に関しては、遅刻をしていようとも、労働日として認められます。
「遅刻早退は、1労働日の所定労働時間の一部について就労しないものであるが、『出勤率の計算上の出欠』は、労働日を単位としてみるべきものと考えられるので、これを欠勤として取り扱うことは認められない」(前掲書)という解釈があります。遅刻や早退をしても、一部の時間出勤している以上は、出勤率を低減させるようなことは認められません。
最後に、欠勤や遅刻・早退後の年次有給休暇の事後的振替と出勤率への影響について考えてみます。事後的な振替は使用者の承認が必要となり、当然に認められるものではありません。丸々1日の欠勤については、事後的に暦日の半休に振り替えることはともかく(出勤率0が100%に)、時間単位年休の事後的振替について、賃金の支給有無に関して差異はありますが、年休の出勤率の計算上は出勤扱いになります。
※基発=厚生労働省労働基準局長から各都道府県労働局長宛ての通達
現場で気になる労働法Q&A
【記事提供元】
「安全スタッフ」2017年1月15日号
出勤率は「労働日単位」でみる。一部就労しての欠勤扱いは不可
出勤率は、全労働日のうち何日出勤したかで決まります(労働基準法39条)。「労働者の勤怠の状況を勘案して、特に出勤率の低いものを除外する立法趣旨」です(昭和33・2・13揮発90号)。全労働日の日数は就業規則その他によって定められた所定休日を除いた日をいい、職種により異なることもあり得るでしょう。
出勤率の計算における「出勤日」とみなされる期間について、
(1)業務上傷病にかかり療養のため休業した期間
(2)育児休業・介護休業をした期間
(3)産前産後の休業期間
は、出勤したものとして処理します(労働基準法39条8項)。これ以外について規定はありません。
「裁判員に選ばれた」といった、正当な手続きにより労働義務を免除されているときの不就業という事実は、必ずしも勤務成績不良という評価を受ける性質のものではなく、8割出勤の計算に当たり欠勤と同様に取り扱うことは妥当ではないとされています。
「遅刻3回で欠勤1日」と処理しているようなケースではどうでしょうか。
1回の遅刻についての減給の限度は、平均賃金の半日分です。そこで遅刻3回ならば、理屈としては0.5日分×3回で1.5日分の賃金カットができます。1.5日分が上限ですから、ご質問のように遅刻3回で1日の欠勤とみなしてカットすることも労働基準法上は可能ということになります。
しかし、これはあくまでも「賃金計算上」の話です。出勤率を計算する際の労働日に関しては、遅刻をしていようとも、労働日として認められます。
「遅刻早退は、1労働日の所定労働時間の一部について就労しないものであるが、『出勤率の計算上の出欠』は、労働日を単位としてみるべきものと考えられるので、これを欠勤として取り扱うことは認められない」(前掲書)という解釈があります。遅刻や早退をしても、一部の時間出勤している以上は、出勤率を低減させるようなことは認められません。
最後に、欠勤や遅刻・早退後の年次有給休暇の事後的振替と出勤率への影響について考えてみます。事後的な振替は使用者の承認が必要となり、当然に認められるものではありません。丸々1日の欠勤については、事後的に暦日の半休に振り替えることはともかく(出勤率0が100%に)、時間単位年休の事後的振替について、賃金の支給有無に関して差異はありますが、年休の出勤率の計算上は出勤扱いになります。
※基発=厚生労働省労働基準局長から各都道府県労働局長宛ての通達
現場で気になる労働法Q&A
【記事提供元】
「安全スタッフ」2017年1月15日号