VRやARも活用! 新しい『体験型マーケティング』の世界
従来の広告やプロモーションとは異なり、消費者に直接的な体験を提供することで、消費者とブランドの関係性を深める体験型マーケティングが注目を集めています。
実際に商品やサービスを手にした消費者は、体験を通じて特徴や利点を知ることになります。
近年は、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)といったテクノロジーの進化により、体験型マーケティングの可能性がこれまで以上に広がりました。
体験型マーケティングの基礎はもちろん、VRやARを活用した最新の事例、そして体験型マーケティングを成功させるためのポイントなどを解説します。
体験が拡散されるSNS時代のマーケティング
体験型マーケティングとは、消費者が商品やサービスを単に購入するだけでなく、そのブランドの世界観や価値観を体験し、共感することでより深いブランドロイヤリティを築くことを目指すマーケティング手法のことです。
たとえば、期間限定のポップアップストアや体験型のイベントスペースなどで、ブランドや新製品を試してもらうといった施策は、体験型マーケティングの一つです。
実際に、スポーツアパレルメーカーの「ナイキ」は、新しいランニングシューズの発売時に、実際に商品を試すことのできるイベントやワークショップを開催して、多くのファンを獲得しています。
また、大手カフェチェーンの「スターバックス」は、テレビCMや広告に注力するのではなく、新商品のテイスティングパーティーやミュージックライブなどの体験型マーケティングでファンを増やしてきました。
体験型マーケティングによって獲得したファンは、一人ひとりがそのブランドを広める広告塔の役割を担ってくれます。
インターネットやSNSの普及により、ファンの体験は発信・拡散されやすくなり、通常の広告を打つ以上の効果を発揮するケースも少なくありません。
特に近年はSNSと連携した体験型マーケティングも増えてきました。
たとえば、複数ある新商品案をSNS投票で決定する仕組みを設けて、消費者の参加を促す「SNS投票型イベント」や、企業が用意したハッシュタグをつけてもらって消費者が動画を投稿するよう誘導する広告である「ハッシュタグチャレンジ」などは、SNSを上手に活用した体験型マーケティングといえます。
VRやARの活用で重要な顧客体験設計
さらに注目を集めているのが、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)といったテクノロジーとの組み合わせです。
VRやARの進化は、体験型マーケティングに新たな可能性をもたらしました。
VRは「Virtual Reality」の略で、ユーザーを完全に仮想空間に没入させることで、現実世界では体験できないような没入感のある体験を提供します。
ARは「Augmented Reality」の略で、現実世界にデジタル情報を重ね合わせることで、現実世界とデジタル世界の融合を実現させます。
実際に大手企業もVRやARを活用した体験型マーケティングに取り組んでいます。
家具メーカーの「IKEA」は、スマホを使って自宅やオフィスの空間にIKEAの家具を仮想的に配置し、購入前にイメージを確認できるアプリを「Apple」と共同開発しました。
また、ARを活用して、ユーザーがスマホをかざすと洋服の試着イメージやスタイリング例が表示されるサービスを試験的に提供したアパレルブランドもありました。
ほかにも、不動産会社によるVRを活用したバーチャル内覧や、自動車メーカーのバーチャル試乗などは社会に浸透しつつあります。
こういった事例からもわかるように、VRやARはデジタル空間における体験価値を提供し、消費者とブランドのエンゲージメントを高めるうえで非常に有効なツールとなっています。
ただし、VRやARを活用した体験型マーケティングは、入念な顧客体験設計を行わないと、思ったような効果が出ません。
過去には、技術がメインになりすぎて、ブランドや伝えたいメッセージが曖昧になってしまったり、インターフェースが不親切なせいでユーザーに使ってもらえなかったりしたという事例もありました。
また、VRやARの開発、導入には高額な費用がかかることがあり、投資したコストに対して得られる効果が見合わない場合もあります。
マーケティング担当者はプロジェクトの規模を適切に設定し、コストパフォーマンスを意識することが重要です。
そして、すべての消費者がVRやARを使いこなせるわけではないため、ターゲット層に応じた顧客体験設計も必要になります。
たとえば、高齢の消費者がターゲットの商品であれば、デジタル空間での体験よりも、試食や試飲イベントのような、実店舗で行う販促のほうが高い効果を得られる場合もあります。
体験型マーケティングは、今後もより高度に発展していくことが予想されます。
VRやARを活用する際は、消費者が「楽しい」「便利」「価値がある」と感じる体験を提供できるかどうかが、大きなポイントになります。
適切な顧客体験設計を行い、消費者の記憶に残る体験型マーケティングを実施していきましょう。
※本記事の記載内容は、2025年2月現在の法令・情報等に基づいています。