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成果主義の企業で導入が進む『多面評価』の利点とリスク

25.02.25
ビジネス【人的資源】
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企業の人材育成や組織の改善において、人事評価は重要な役割を果たします。
そして、数ある人事評価の手法のなかでも、近年注目を集めているのが「多面評価」です。
多面評価とは、上司だけではなく、同僚や部下など、複数の評価者から一人の従業員を評価する仕組みのことで、「360度評価」や「360度フィードバック」などとも呼ばれます。
多面的な視点を取り入れることで公平性や透明性を高められる一方で、リスクや課題もあります。
多面評価の導入を考えている企業に向けて、具体的なメリットやリスクなどを解説します。

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公平性や新たな気づきを得られるメリット

多面評価とは、従業員のパフォーマンスや業務の成果、行動特性などを、複数の立場や役割を持つ評価者が評価する手法のことです。
従来の上司による人事評価は、どうしても上司の主観や個人的な感情が入り込んでしまう可能性がありました。
多面評価の目的は、一方向の評価に偏ることなく、人事評価の客観性や信頼性、公平性を高めることにあります。

上司からの評価だけでなく、同僚など、その従業員に関わる多くの人たちが評価に参加することで、従業員の行動やスキルを多面的に理解できます。
また、評価対象者自身も自己評価がほかの評価者からの評価とどう異なるのかギャップを知ることで、新たな気づきを得られるというメリットがあります。

日本では、主に成果主義を採用している大企業や外資系企業を中心に、多面評価の導入が進んでいます。
成果主義型の企業では、年功序列型の企業のような勤続年数などではなく、従業員個人の業績を正しく評価する必要があるからです。

では、これから多面評価を実施しようとしている企業は、何から取り組めばよいのでしょうか。
まず、多面評価の導入に必要なのは、導入する目的の明確化と評価項目の設定です。
公平な人事評価か、それとも人材育成なのか、メインとなる目的によって評価項目も変わってきます。
評価項目は、企業や業務などによって異なりますが、たとえば、チームで動くプロジェクトに従事している従業員であれば、「チームワーク」「リーダーシップ」「チームのルールの遵守」などが重視されます。

次に、評価者を適切に選定し、評価のプロセスやフィードバックの方法を計画します。
多面評価には人事評価のほかに、人材育成や業務改善などの目的もあり、評価対象者へ適切に評価をフィードバックすることで、その従業員の成長を促すことにもなります。
評価者は、普段から評価対象者に関わりのある上司や部下、同僚のなかから複数名を設定します。
人数は少なすぎると多面的な視点が得られませんし、多すぎると負担のかかる評価者が増えてしまうことになります。
会社の規模などにもよりますが、評価対象者一人に対して5~10名くらいが適切とされています。

評価の実施は、事前に設定したスケジュール通りに、アンケートへの回答や、評価シートへの記入といった方法で行います。
各評価項目の合計した評価点が評価対象者の評価になりますが、本人にフィードバックする際は、単に数字を知らせるだけではなく、「どうしてその評価点になったのか」「今後はどのような部分を改善していけばよいのか」など、具体性を持って伝えましょう。

意欲低下や評価者の負担増などのリスクも

日本における多面評価の普及率は15%ほどといわれており、特に従業員のモチベーションの向上や、組織全体のコミュニケーションの活性化を図りたいと考えている企業を中心に導入が進んでいます。
一方で、導入を見送る企業も少なくありません。
客観的で公平性があり、従業員の成長にもつながる多面評価ですが、リスクもあります。

リスクの一つとして、評価者の適切ではないコメントによって、評価対象者に対する誤解を生んでしまったり、モチベーションを下げてしまったりする可能性があります。
選ばれた評価者が評価することに慣れていないケースもあり、評価基準を十分に理解していなかったり、評価に偏見が入り込んだりすることで、評価結果の信頼性が損なわれるおそれがあります。
あらかじめ評価者に対して十分な説明やトレーニングなどを行い、評価が恣意的にならないようにしなければいけません。

さらに、普段は人事評価に携わらない人が通常の業務のかたわら、評価しなければならないこともあるため、評価者の負担の増加も懸念されます。
多面評価の運用には手間やコストなどもかかるため、導入後も評価者間の意見交換や調整などを継続して行い、制度として改善していくことが求められます。

導入を検討する際には、自社の目的や組織文化に合わせて評価基準や運用方法を設計し、多面評価による効果を最大限に引き出すことが重要です。
多面評価のメリットやリスクを総合的に判断し、自社の状況に合った評価制度を構築していきましょう。


※本記事の記載内容は、2025年2月現在の法令・情報等に基づいています。