測量した土地の面積が異なる場合に行う『土地地積更正登記』とは
所有している土地の実際の面積と、登記簿に記載されている面積が異なることがあります。
一般的に実際の面積と登記簿の面積に差があっても、ただちに支障が出るわけではありませんが、土地の売買や分筆登記などを行う場合は、実際の土地の面積を測り、登記簿の面積を正しい面積に修正する必要があります。
この手続きを「土地地積更正登記」といいます。
実際の面積と登記簿の面積を一致させる土地地積更正登記は、一般的には土地家屋調査士に依頼します。
土地の測量を予定しているのであれば、土地地積更正登記の基本を理解しておきましょう。
実測面積と公簿面積にはなぜ差が生まれる?
土地を測量して、割り出した実際の面積のことを「実測面積」といい、登記簿に記載されている登記上の面積のことを「公簿面積」と呼びます。
通常、実測面積と公簿面積は同じはずですが、土地によっては双方の面積が一致しないことも珍しくありません。
実測面積と公簿面積に差があるのは、明治6年から始まった地租改正が原因といわれています。
地租課税の資料とするために土地を測量しましたが、当時の土地の所有者が高い課税を逃れるために土地の面積を実際よりも少なく申告していたと思われるケースや、明治時代の測量技術が未熟などの理由から、実測面積と公簿面積の一致しない土地が数多く発生しました。
地租改正以前から存在する土地を実際に測量してみると、公簿面積よりも広かったというケースや狭かったというケースは少なくありません。
このような実測面積と公簿面積に差がある場合に、登記簿の公簿面積を測量した実際の面積である実測面積に修正する手続きが「土地地積更正登記」です。
ただし、土地地積更正登記には申請する義務がありません。
たとえ実測面積と公簿面積に差があっても、土地地積更正登記を「する・しない」はあくまで所有者の任意です。
では、どのような場合に土地地積更正登記を申請したほうがよいのでしょうか。
よくあるケースは、土地を売買するタイミングです。
実測面積と公簿面積に差があり、土地の境界があいまいな土地は信頼性も低く、買い手がつかない可能性があります。
通常は土地家屋調査士や測量士などに依頼して土地の測量を行い、土地地積更正登記を行なってから売買するのが一般的です。
土地地積更正登記を行うと、法務局に新しい「地積測量図」が保管されます。
地積測量図とは、土地の測量結果を表す公的な図面のことで、不動産登記規則第77条に基づき、その土地の方位や縮尺、地番や地積、境界点の座標値などが記載されています。
土地の登記記録に新しく保管された地積測量図が紐づいていれば、その土地の実測面積と公簿面積は一致していることになります。
地積測量図が存在している土地であれば、信頼性も高く、安心して売買ができるというわけです。
また、土地の売買のほかにも、分筆登記や相続税の物納、隣の土地との境界を確認する場合などにも土地地積更正登記を申請します。
土地の正確な面積を登録しておくメリット
測量によって土地の面積を明確にしておくと、万が一のときにも安心です。
たとえば、大地震や土砂崩れなどの災害に見舞われ、土地の境界がわからなくなってしまった場合に、実測面積が公簿面積より広かったとしても証明する手立てがないため、公簿面積を元にあらためて境界を定めることになってしまいます。
土地地積更正登記によって公簿面積を実測面積に修正しておけば、境界がわからなくなったとしても、本来の正しい面積を主張することができます。
自分の土地を将来的に守ることにもなるため、実測面積と公簿面積が異なるのであれば、土地地積更正登記を申請しておきましょう。
ただし、測量によって公簿面積よりも実測面積が広かった場合には、固定資産税が上がってしまう可能性があることに留意しなければいけません。
土地は面積に応じて固定資産税が課税されますが、土地の評価額を求める場合には公簿面積が採用されます。
もし、土地地積更正登記によって以前よりも公簿面積が増えれば、その分の固定資産税がかかることになります。
一方、面積が増えた分、土地の価値が上昇する可能性もあるので、よく精査したうえで判断することが大切です。
また、土地地積更正登記は専門家に依頼することになるため、その分の費用もかかります。
自分で土地地積更正登記を申請することも不可能ではありませんが、土地の測量には専門的な知識や技術が伴い、法務局に提出する地積測量図などの資料を作成する必要もあるため、通常は土地家屋調査士などに依頼します。
土地家屋調査士は不動産の表示に関する登記の専門家で、土地地積更正登記を代理で申請できるのは土地家屋調査士のみです。
売買などで土地の測量を考えているのであれば、その分野の専門である土地家屋調査士や、その土地を管轄している法務局に相談することをおすすめします。
※本記事の記載内容は、2025年2月現在の法令・情報等に基づいています。