集患にも効果あり!? さまざまな用途に使われる『マウスピース』の基礎知識
歯科矯正やスポーツ時の保護、歯ぎしりの改善などに使われるマウスピース(マウスガード)は、歯科医院でつくることが可能です。
患者に合わせてつくるマウスピースは、市販のものに比べてつけ心地がよく、安全性も高いのが特徴です。
マウスピースのカスタムメイドに力を入れることで、ほかとの差別化を図り、集患に成功している歯科医院も少なくありません。
一定のニーズがあるマウスピースの基本を解説します。
スポーツ選手にも使われているマウスピース
マウスピースは歯の位置を固定して、歯や顎に加わる力を分散させるための器具で、さまざまな用途に使用されます。
歯のすり減りを防止する効果があることから、歯ぎしりや食いしばりの対策に使われることもありますし、口腔内の詰め物や被せ物を保護するのにも適しています。
ほかにも、歯列矯正や顎関節症の改善、睡眠時無呼吸症候群の防止などにも使用されています。
また、歯や歯肉、顎の骨などを保護し、かみ合わせの改善によってパフォーマンスの向上も期待できることから、スポーツにもマウスピースが取り入れられています。
近年はルールとしてマウスピースの装着が義務づけられているボクシングやアメリカンフットボールなどのフルコンタクトスポーツ以外にも、野球やサッカー、バスケットボールといった球技でもマウスピースを装着する選手が増えてきました。
長野オリンピックのスピードスケート金メダリストの清水宏保選手は、マウスピースを装着して練習していました。
最近では、サッカー日本代表の遠藤航選手が試合中にカスタムメイドのマウスピースを装着していることで知られています。
既製品のマウスピースは医療器具には該当しないため、ネット通販などで誰でも買うことができ、スポーツ用であればスポーツ用品店などでも購入することも可能です。
ただし、目的に合わせたものを使用しなければ、効果がないばかりか、体に悪影響を及ぼしてしまうこともあるので、注意しなければいけません。
寝ている間の歯ぎしりや食いしばりを防ぐのであれば、ナイトガードと呼ばれる睡眠時専用のマウスピース、スポーツ用途であればスポーツ用マウスピースを選ぶ必要があります。
また、温めた樹脂プレートを噛んでみずから成形するセルフタイプのマウスピースも販売されています。
素材は柔らかいゴム製とレジンと呼ばれる硬い樹脂製のものが多く、ゴム製は装着の違和感が少ない分、継続的に力が加わると削れて穴が空きやすいという弱点があります。
樹脂製は素材が削れることも少なく、しっかりと歯を保護しますが、ゴム製よりも装着時に違和感が生じることがあります。
歯科医院での作成をおすすめする理由
患者から既製品の購入を相談されることもあると思いますが、やはりマウスピースは歯科医院で作成したカスタムメイドのほうがよくフィットしますし、歯を保護する効果もあります。
患者の要望にもよりますが、できれば歯科医院での作成をすすめましょう。
カスタムメイドのマウスピースも既製品と同じく医療機器には該当しませんが、歯科医院や歯科技工所で作成された矯正用途のマウスピースは矯正装置に該当します。
近年は歯科医院などの医療機関を介さずにカスタムメイドのマウスピースを作成して提供する事例がありますが、マウスピースを作成して患者に装着する行為は歯科医行為に該当し、マウスピースの作成は原則として歯科技工士が行うべきとされています。
カスタムメイドのマウスピースは一般的に歯科医院や歯科医師から委託を受けた歯科技工所などで作ります。
歯ぎしりや食いしばりの対策が目的であれば保険が適用され、患者の負担は3,000~5,000円ほどで済みます。
マウスピースの耐用年数は一般的に1年ほどといわれており、カスタムメイドのマウスピースは定期的に穴が空いていないかなどのチェックをする必要があります。
ただし、作成から半年が経てば再び保険適用でマウスピースをつくることができるので、その旨を患者に伝えておきましょう。
一方、歯列矯正用やスポーツ用のマウスピースの作成は、自由診療となり、保険が適用されません。
また、半年以内の作り直しは自費になってしまうことや、慣れるまでにはどうしても違和感が出てしまうこと、必ずしも期待どおりの効果が出るわけではないことも伝えておく必要があります。
その他、保管方法やお手入れ方法、正しい装着の仕方などについて、マウスピースを使いながら詳しく説明することが患者からの信頼獲得にもつながります。
※本記事の記載内容は、2025年1月現在の法令・情報等に基づいています。